小説

□3:理の花(長市)甘々
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長政と市を乗せた馬の動きが止まる。
目を瞑り長政の胸に身を預けていた市はうっすらと目を開けた。

市が辺りを見渡すともう夕間暮れだった。
それからゆっくりと長政を見上げた。

「長政様…?どうしたの?」

「市…少し馬から降りるぞ。」



市は馬を降りると、そこが百合の花が咲き乱れている場所だということに気がついた。
太陽が沈み、夜の一歩手前。数歩先もよく見えないが、甘くむせかえるような香りだけは分かる。

市は長政の方を振り返った。

「市。…私はお前の兄を殺した。」

酷く真剣な声だった。

「正義のためだとはいえ、私のしたことは重大なことだ。許して欲しいとは言わん。だが分かってほしい。」

「長政様…」


謝らなくちゃいけないのは、市の方、でしょう…?


「いいえ長政様…悪いのは市…ずっと騙してたのに、迎えにきてくれた…とても、嬉しくて…兄さまのことは、考えられないくらいなの…」

「市…」

長政がこちらに歩いてくる音がする。
暗くてその表情をうかがうことができない。
ただ抱きしめられた感触だけがした。

「市、私は誓おう、正義に、この花に、お前に、私自身に。もう正義を見失わない。お前を放しはしない。お前を泣かしはしまい。市を悲しませるすべてのものを、削除しよう。」

腕の力が強くなる。



ああ、これは、夢?



「市…泣くな。もう誓いを破らせる気か?」

腕の中の市が泣いているのに気付き、指でそっと涙を拭ってやる。

「ごめんなさい、でも、もしかしたらこれは夢なんじゃないかって…」

「馬鹿を言うな…夢であってなるものか」


ごめんなさい。そう言おうと顔を上げる。


腕の力が少し緩んだかと思うと、唇に暖かいものが触れた。



「長…」

「無駄口は悪だ。市。」


思えば、初めての口づけだったかもしれない。
市は長政の真っ赤になったであろう顔を想像しながら、愛しい人の胸に顔をうずめる。




何も見えない、幻のような香りの中で、貴方のことだけを想う。




「市…幸せ。」


























とにかく二人が幸せに幸せにと思って書きました。
やっぱりハッピーエンドが一番ですよね。

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