□まほろま
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霞む視界の中で、私は約束していた場所へと向かう。
刀を杖代わりだなんて、笑えない。銀時やヅラや高杉に笑われてしまう。
尤もそんなことはなかった。何故かと言うと皆が

――円を描くように横たわっていたからだった

銘々に傷を負い横たわっている。一度見ただけで分かる。きっと、助からない。

「おー、漸く来たのか」

そんな中で銀時が間延びした声をあげた。

「来たよ、悪い?」

「悪くはない。お前が死んだかとさっきまで心配してた」

「黙れヅラ」

悪態をつきながらも私はゆっくり彼らの空いたスペースに寝そべる。嗚呼、疲れたと実感してしまう。視界が霞む。
私は何とは無しに声をあげた。

「ねーぇ皆でさぁ、手ぇ繋がない?」

「あぁ?面倒臭ェ」

「だってさーこのまま私達死んじゃうんだよ、手繋いでたら皆で同じ場所行けそうじゃない?」

「地獄まで道連れってか?」

「うん、まぁそういうこと」

段々と体が冷えていて、皆で手を繋ぐのは苦労した。これだけに大分体力を使ってしまう。
それでも私は高杉と銀時と手を繋げた。上にはもじゃもじゃとした髪が見える。息遣いは、聞こえにくいけど。

***

緩やかに経過する時の中、皆の息が聞こえなくなっていく。私も意識が朦朧としていた。

「高杉ぃ、聴いちょる?」

「嗚呼、一応」

「うちね、もっと皆で遊びたかったんよ
もっと皆と生きたかったんよー?」

「……」

「ほんと、何の意味があったんだろね
うちらがやったこと意味はなかったんかね?」

気がつけばずっと封印していた故郷の訛りと感情が溢れていた。涙が止まらない。笑って、いたいのに。走馬灯がくるりと巡る。

「誰も分かんねぇだろうが」

「そうなんだけどね、うちは嫌だけん
もっと生きたかったんだけん
皆と居たかったんだけん」

冷たくなる傍らの手、聞こえなくなっていった皆の吐息。淋しい。皆と違う場所に逝ってしまうのが。

「ろくな所にいけるわけがねぇだろう、銀時も、お前も、ヅラも、そして俺も」

「あんねぇ、高杉。うちずっと高杉が好きだったんよ」

今更、何を言うんだろう。いっても意味無いのに。

「だけん、次生まれるときは絶対高杉落としちゃあけん」

声は聞こえない。吐息も聞こえない。涙が止まらない。ああ、ああ、ああ…………
消える。霞む、眠くて耐えられない。でも私の心は知らない間に落ち着いていた。皆がいるなら、

***

目を覚ました。白い、温かな場所。
体を起こすと酷く怠い。

「あ」

私は小さく声を上げた。周りには皆が立っていた。私を呼んでいた。
私は笑い、彼らの元へ駆け出した。



ほらまは、墓場まで

(あ)(どうした?)(今こいつらの顔が笑った気がしたんだ)

―――
企画JOYFES様へ
参加させて頂き、ありがとうございました


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