ゴ ー ス ト ハ ン ト
□ Psychedelic Heroine
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依頼内容を聞き終えた後、機材のセッティングとチェックを終えた頃には、外はすっかり暗くなってしまっていた。機材が起動したのを見届けて一息つくと、俺たちは彰文さんに案内され、店の一郭にあるお座敷に向かった。
広い上品なお屋敷では、長いテーブルに向かって四人の男の人が座っていた。一人は先ほど話をしてくれたお父さんの泰造さんだ。泰造さんが白い板前の服を着ているところをみると料理はこの人が作るんだろう。
泰造さんはその場にいた男の人を紹介してくれた。長男の和泰さん、次男の靖高さん、お婿さんの栄次郎さん、だそうだ。
その後、女の人が四人、料理を持って入ってきた。
裕恵おばさんに続いて、和泰さんの奥さんの陽子さん、長女の光可さん、次女の奈央さん。
しばらく食事をしていると突然栄次郎さんが声を挙げた。
「なんでこんな奴らを呼んだんだ!ちゃんと言ってやった方がいいんじゃないのか!」
「ちょっと、なんなのお客様の前で」
「心配して言ってるんだ!ちゃんと教えてやった方がいい。三十二年前、死んだのは家族八人だけじゃないってことをな」
「どういうことですか」
ナルが問う。
「やはり、きちんとお話したほうがいい」
言ったのは泰造おじさん。その言葉に裕恵おばさんは躊躇した。
「でも…」
「それでみなさんがお帰りになられても仕方がない」
「…そうですね。お話申し上げましょう。…実はそのとき、家族以外で三人のお客様も亡くなられておりまして…。その全員が霊能者の方でした」
その言葉に麻衣、綾子、ぼーさんは驚く。
「…なるほど」
ナルはつぶやいた。
食事を終え、ベースに戻った。
「とか言われて、相手も見ないで逃げ帰るわけには行かねーわな」
「ありがとうございます」
彰文さんが言った。
「色々な方に相談したのですが、みなさんそれを聞くと二の足を踏んでしまって…」
「それでわざわざ東京まで…」
「納得!」
「さっきは本当にすみませんでした。栄次郎兄さんももともとは人当たりがいいんですが…あんな不機嫌な顔は初めて見ました」
「つまり、お客に対してあの様な態度を見せるような人ではないと?」
「ええ。うちは客商売ですから」
「和泰さんはどうです?」
「和兄さんもこの二、三日ピリピリしていて。靖兄さんもそうです。祖父の葬儀の頃からちょっと…」
「仕方ないですよ。心配事があるんですもん」
「他に様子が変わった人や何かおかしな事はありましたか?」
「おかしな事と言えば…葬儀の日から三日ほどの間にうちで買っていた犬が三匹とも診断ですが、その死骸が全て海岸に打ち上げられていて…。その頃から陽子姉さんの様子も。いや、うちで一番様子が変わったといえばやっぱり子どもたちです」