ゴ ー ス ト ハ ン ト

□ Psychedelic Heroine
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松江さん一家には何も憑いている様子はなく、ジョンがお祈りだけして二人はベースに戻ってきた。

全員揃ったところで安原さんが調査結果を発表した。


「この村はかなり古くからあり、特に外部との接触をひどく嫌う傾向があります。もちろん、司郎さんのように外に出る人間もいますが、稀ですね。そういうこともあって、調べるのはかなり苦労しましたよ」

お疲れ様です、と言わんばかりに麻衣が苦笑する。

「谷山さんが言っていたこの村は不気味、の理由にもなると思うんですが、この村の至るところが曰く付きで、周りの村では有名のようです。なんでも近年まで生け贄の風習があっただとか、神隠しが相次いで起こるだとか。どれも噂話の域を出ていないので真実の程はわかりません」

安原さんにしてはいつになく曖昧な情報だな。そこまでこの村の情報は外部に漏れないということなのだろう。

「ただ、興味深いのは二つのカカシの階段です。白いカカシと黒いカカシ。まず白いカカシというのが、とあるじょうけんで現れる白い人型の何かで、風もないのにゆらゆら揺れているようです。それで…近くで見ると精神に異常をきたすとかなんとか」
「それって司郎さんが言ってた話じゃない?」
『司郎さんのお兄さんが見たってやつか…』
「これ、実話だったんですか?じゃあ、お兄さんは…」
「精神に異常を来たし、数年後に亡くなったそうだ」

ナルが答える。

「司郎さんはこの家で起こってるポルターガイストはお兄さんによるものじゃないかって言ってたんだけど…」
「その真相はまだ未解明なんだわ。はるもまだ見てないし…。真砂子ちゃんはどう?」
「私もまだ、それらしい姿は見ていませんわ。ただ、この隣の部屋の上がなんだか騒がしい気がします」
「それって物置部屋だ。はるが具合の悪くなった部屋だよ」
『すごい臭いだったんだぜ。鼻がもげそうだった。真砂子はあの部屋には近付かない方がいい』
「そういや物置部屋の臭いの原因ってのもわかんないままだしな」
「一度あの部屋を徹底的に調べられればいいんだが」
「あの婆さんが許してくれっかね。さっき物置部屋に近づいたら叱られちったし」
「あのお祖母さん、なーんか怪しいんだよね」
「司郎さんの兄の死について真相を知っているのは確実だろう」

そのままお祖母さんの話に左遷してしまったが、埒が明かないのでナルが話を戻した。

「で、もう一つの黒いカカシというのは?」
「はい。これは目撃談があって、怪談の原因も明確です。この家から一キロほど離れたところに林道があると思うんですが…」
「あるある!昨日、ぼーさんと行ったところだよね?」
「あの首のない地蔵があった道ね。昼間なのに薄暗いのなんの」
「その道を抜けた先に空き家が三軒ほどあってその隣の小川…ここなんですが」

安原さんは鞄の中からこの村の地図を取り出し問題の場所を指さした。

「この小川で黒いカカシを見たという人がいるんです。隣村から新聞配達をしている少年から聞いたんですが。新聞配達の帰り、黒い人が二体、その小川に浮いていたっていうんです。新聞配達仲間の中では有名な話で“黒いカカシ”という名前がつけられているんですが、このカカシというのが…」
「(昨日の視界に入ってきた黒いのって…)」

麻衣には心当たりがあるらしかった。そんなことは知らず、安原さんはさらに続けた。

「焼死体の幽霊らしいんです。三年前、小川の近くに住む男性宅が火事になり一人息子を抱えて命からがら逃げ出すも力尽きて小川へ。体についた火を消そうとしたためだとは思うんですが」
「なるほどな」
「それから、先ほど滝川さんが仰っていた首のない地蔵があるでしょう?あれにも怪談があって、通称“首なし地蔵”。この地蔵ってのが本来の役割とは正反対で祟りをもたらすのだとか。どこかにある地蔵の首を元に戻すのが祟りを発動させる条件だそうですよ」
「その怪談の体験談はないんですか」
「村人の子どもが良心ゆえに首を戻したところ、翌日に謎の発疹が出来て息絶えたそうです。真偽の程はわかりませんが」
「あの地蔵にそんな話が…」
「あとは神隠し、生け贄、古井戸の怪なんかもありますがありきたりな上、真相のほどもわかりません」
「古い村にはよくある話だな。明日、その怪談の場所の霊視をしてみよう。それから、司郎さんに頼んでこの村の内情を話してくれる人物の確保を」
「それなら僕が」
「この家で起こる怪異と村の怪異が無関係の確信はない。」
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