ゴ ー ス ト ハ ン ト

□ Psychedelic Heroine
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お祖母さんにすっかり水を刺されてしまった俺たち。麻衣はというとあのお祖母さんの態度が頭にきたと顔に書いてあった。

ナルは話の続きを聞くより先にベースを作ることを優先させることを決めたようだ。


ベースとして用意されたのは八畳間の部屋が二部屋。間には襖があるだけで、それを開ければ十分な広さだった。


「六畳ほどの部屋をもう二つほど用意してあります。そちらもご自由にお使いください」


そしてベースを作り始める。ベースの部屋は一階で、寝泊まりする部屋は二階にあった。

機材を運ぶ途中、莉緒ちゃんが柱の陰から様子を伺っているのが見えた。

話しかけてみようと思ったが、手には機材。どうしたものかと考えているとちょうど機材を取りにくる麻衣が現れた。


『麻ー衣』

「なに?」

『ちょっとこれ頼んだ』

「えー」

『まあそう言わずに』


麻衣は渋りながらも機材を受け取ってくれた。

そして俺は廊下を少し進み、しゃがんで柱の陰に隠れる莉緒ちゃんの名前を呼んだ。

彼女はビクッと肩を震わせた。人見知りらしい。


『莉緒ちゃん、おいで』

しかし彼女は動かない。

『大丈夫、怖くないから』

やはり彼女は警戒を解かない。


『俺は黒崎はる。莉緒ちゃんが困ってるって聞いて助けに来たんだ』

しかしこれには反応した。小さく「ほんと…?」と返してくれたのだ。

『本当だ。だからこっちに来て少しお話しないかい?』

言うと、莉緒ちゃんは私の前までちょっとずつ歩いてきた。

『俺は君の味方だ。困ったときはいつでも俺に助けてって言ってくれ。必ず助けに行くよ』

「おにいちゃん…」

『なんだい?』

「あ、あのね…」

『ん?』

「りおと…あそんでくれる?」


俺は笑って答えた。


『もちろんだよ』










子どもって面白いよな。会話が噛み合わないんだから。まあ、莉緒ちゃんとお近づきになるには一緒に遊ぶのが一番か。


「おにいちゃんたちはなにをしてるの?」

『お仕事だよ。見てみるかい?』


そう言うと莉緒ちゃんはコクリと頷いた。

彼女を抱き上げてベースに行くとナルとリンがせっせと機材の準備をしていた。

麻衣はぼーさんを引っ張ってカメラの手伝いでもさせているのだろう。そこにはいなかった。


ナルは俺を見るなり眉間にシワを寄せて、早速嫌味を言ってきやがった。


「何を遊んでいる。お前はここに何しに来ているんだ?」

『仕事してるよ。ほら、こうして莉緒ちゃんの護衛』


莉緒ちゃんを見てナルはちょうどいいと思ったのか、作業の手を止めてこちらへやってきた。


「莉緒ちゃん、家の中で知らない人に名前を呼ばれるんだと君のお母さんから聞いたんだが」


と、ナルが言った瞬間、莉緒ちゃんは泣き出してしまった。それをあわててあやしてやる。


『あーもう、泣かすなよな』

「泣かすような真似をしたつもりはないが」


ちょうどそれをカメラの設置から帰ってきた麻衣が見ていたらしく、ナルに「あー!ナルまたこども泣かしてる」と言っていた。


「ナルって子どもに嫌われる才能でもあるんじゃないの?」

「別に好かれる必要はない」

「でも今のはおかしくねえか?ナルは莉緒ちゃんに話しかけただけだぜ?」

「ナルの顔が恐かったんじゃないのー?」

『いや、多分この子は人見知りなんだと思う。俺もこうして抱っこさせてもらうまでに結構な時間食ったし』

「ってはる、人に機材押しつけて何をしてたかと思えば…莉緒ちゃんと遊んでたの?」

『護衛だよ護衛』


ナルにびっくりしたらしい莉緒ちゃんは泣き止んだもののすっかり俺の首にしがみついてしまった。


「でもはるが子どものお世話なんて何か意外だね」

「ちゃんと母性本能はあるんだな」

『笑うな』



「…はる」

『─?なに、ナル』

「この家を見てきてくれ。何か感じるようなら報告を」

『了解。麻衣、ぼーさん、行こう』

「麻衣には特別に雑用を残してある。行くなら麻衣は置いていけ」

「と、特別な雑用?」

『わかった。ぼーさん行こうぜ』

「おお。麻衣、特別な雑用、頑張れよ!」


そして私とぼーさん、莉緒ちゃんはベースを後にした。頬をふくらました麻衣を残して。




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