ゴ ー ス ト ハ ン ト
□ Psychedelic Heroine
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「それと鉦幸氏の追加情報。鉦幸氏って小さい頃から体が弱かったそうよ」
「子どもの頃からあまり長生きできないと言われていたそうで、たびたび外遊をしては外国の医者に見せに行っていたようです」
「それと鉦幸氏がここに住むようになってから使用人が二人一緒だったって」
「後ですね、当時ここには母屋と離れがあって生け垣で出来た迷路で結ばれていたそうです。ここに出入りしていた植木屋さんは気味が悪くてここに来るのは嫌だったと言ってました。離れは墓場みたいな嫌な臭いがするし、来る度にお手伝いさんが代わってたって」
「鉦幸氏と浦戸の交友関係で何かわかったことは?」
「それなんですがね、浦戸っていうのは雅号だったんです。鉦幸氏の」
その言葉にみんな驚く。
「つまり…浦戸と鉦幸氏は同一人物ってことか?」
『じゃああの肖像画は鉦幸氏だったのか』
その時、安原さんが麻衣の異変に気付いた。「谷山さん?」と声を掛ける。明らかに様子がおかしい。
「麻…」
ぼーさんを制止した真砂子が麻衣をなだめた。
「この人はいけませんわ。あなたを救ったりは出来ません。あなたはもう死んでいるんですもの。さあ、降りて。恐れないで光の方へ行ってごらんなさいな。きっと楽になれますから」
「…!………」
麻衣は落ち着きを取り戻した。
「話をしていたのでこの家に住む霊がついたんですわ。今話していたお手伝いさんのようです」
「その人だ…。夕べ夢の中で殺されたの…」
「霊の記憶だったのか」
「あんな殺され方してどんなに怖かったか…」
麻衣は目に涙を溜めた。声もふるえていた。
そしてついに両手で顔を覆って泣き出してしまった。
「そうやって殺された霊がこの家をさまよっているわけか」
途端、部屋の電気が消えた。と同時に苦しみもがく悲鳴が辺りを包んだ。一人二人の声ではない。大勢の悲痛の叫びである。
「何これ…!こんなラップ音聞いたことない!」
初めての現象に戸惑う一同。
麻衣が不安そうにナルの名前を呼ぶ。
ナルが「動くな」というと電気がついた。
「やだ…何これ…」
そして現れたのは四方の壁を埋め尽くすほどの助けを求めた血文字だった。
「なんなのよコレ…!」
「これ…霊がやったの…?……ナル!」
麻衣が指した先には赤色の“浦戸”という文字が。
「なんで浦戸の名前が…」
「ねえ、こっちも!」
『ここもだ』
あちらこちらに“浦戸”と書かれていた。
廊下からは急いでいるのだろう足音がどんどん近づいてきている。
「誰か来る」
「退散しましょ、安原くん」
「はい」
誰かが近づいてきているのは明白なのでまどかと安原さんは窓から出て行った。
それから部屋のドアが明き、従業員が現れた。息を切らしている。
「ご無事ですか…!…ああ、やはりこちらにも…。突然屋敷のあちこちに変な文字が。まるで血で書いたような」
「この家の霊って一体どれだけいるのよ」
「浦戸というのは思っていた以上に意味のある言葉らしい。単なる雅号とは思えない。この意味がわかればな。……原さん、ここで降霊術をやれる自信はあり
ますか?」
「ありますわ」
「ちょ、ちょっと待って!それって真砂子に霊を憑依させるってことでしょ!?やっちゃダメだよ!あたしの夢みたいに怖い思いするかもしれないじゃない!」
「麻衣、原さんはプロだ」
「…!ナルに自分が殺される気持ちわかる!?自分が死んでいく瞬間がどんなに怖いものかわかる!?あたし、絶対真砂子に降霊術なんかさせないからね!」
ナルは感情のない目で麻衣を見ていた。
「…ナル…?」
「仕方ない、多少不確実な方法になるが…リン、呼べるか?」
「やってみましょう」
「!…リンさん…!?」
「ご心配なく。私のは召魂。霊を呼ぶだけですから」
「召魂ってなんですやろ?」
わからないジョンがぼーさんに問う。ちなみに俺もわからないので耳を傾けた。
「中国の巫蠱道にあった霊を呼ぶ方法。たしか呼び出す霊の名前や生年月日とか細かいデータが必要らしい」
「今呼べるのは、死んでいると過程してここで消えた鈴木さんか厚木さんだけです」
「構わない。やってみよう」