ゴ ー ス ト ハ ン ト
□ Psychedelic Heroine
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リンはそっとベッドに寝かしてくれて、ジョンが毛布を掛けてくれた。
ぼーさんはしゃがんで様子を伺ってきた。
「どうした?」
『ちょっと…霊に、当てられたらしい…』
今まではそんなことなかった。なのになんで今日は体調を崩してんだ…?
「霊障か」
「なんでまた急に」
「そういえば先程、我々が谷山さんたちの部屋に入ったとき、ドアの外を見ていました」
「ドアの外には何が?」
「何もありませんでした」
「じゃあ俺たちには見えない何かが見えてたってわけか。それで?」
『…わからない。とりあえず、こんなことは初めて』
「そうか。ま、ゆっくり休め。な?」
言って、ぼーさんはぽんぽんと頭を撫でてくれた。
それからしばらくして部屋の電気が消えた。
夜明けまで仮眠をとることになったらしい。
胸が苦しくて心臓を引っ張られるような感覚に襲われてなかなか寝つけないでいると、俺のベッドに誰かが腰を掛けた。
不審に思って確認すると、なんとそこにはナルが。
電気が消えていて真っ暗闇なはずなのにナルの姿ははっきりと見えた。まるでナル自身が光を放っているかのように。
ナルは柔らかく微笑んで俺を見ていた。
「…辛い?」
『少し…』
口を開いていないのに意識の疎通ができた。これは夢か?
それに目の前のナルには違和感がある。俺の知っているナルはこんなに優しく笑ったりしない。
『ナル…じゃない…?』
別人に思えて仕方ない。ナルがこんな風に笑うか?確かに姿形はそっくり…を通り越して同じだが、雰囲気というかオーラ(?)がナルとは別物だ。
俺の問いかけにナル(のそっくりさん)は笑みを深くして、首を少し傾げた。
「わかる?」
『うん。魂の色が違う』
「やっぱりすごいね、はるは。思った通り」
『そんなことないさ』
兄貴に比べたら俺の霊力はやはり多少劣るし、俺より強い敵はまだまだいる。
『そんなことより…えっと…』
「ユージン」
『─?』
「僕の名前だよ」
『ゆーじ?』
「違う、ユージン」
『…外国人?』
「そうなるかな」
『ナルとは双子…なんだよな。見るからに』
「似てる?」
『似てないと思うのか?』
「思わない」
言って、ユージンはくすりと笑った。
あれ、そういえばユージンと話している内にいつの間にか胸の苦しいのがなくなっていた。
『ほんとにナルにしか見えない。いいな…そっくりで…』
「なぜ?」
『俺も…双子なんだ。でも似てない。まあ、兄貴は男で俺は女だから仕方ないんだが…』
「はるのお兄さんはどんな人?」
『俺より強い。霊力も喧嘩も。勉強もそこそこできて…友達も多いな。目付きは悪いかも知れないけど優しくて、人思いで面倒見もいい』
「そう」
ユージンは笑って頭を撫でてくれた。
「はるはお兄さんのことが大好きなんだね」
『…え?』
「今、すごく優しい顔をしてたから」
そんな風に言われては照れてしまう。きっと今俺の顔は真っ赤なんだろうな。目のやり場に困ってユージンから視線を逸らした。
しばらく、ユージンが背中を擦ってくれている内に眠気が押し寄せてきた。
ぼーっとする頭にユージンの言葉が響いた。
「ここは危ない。だけど、はるならきっと大丈夫。だからって無茶は禁物だよ」
『………う、ん』
閉じそうな瞼と必死に戦ってなんとか返事をした。
「ナルのこと、守ってあげ…───」
そこで俺の意識は完全に途切れた。