ゴ ー ス ト ハ ン ト

□ Psychedelic Heroine
1ページ/2ページ








夏のオフィス。いつものようにぼーさんと綾子は喫茶店代わりに訪れて麻衣がナルの身元調査をしながらぼっこぼこに(もちろん嫌みで)されているのを笑いながら見ていると、オフィスの入り口のドア、磨りガラス越しに、中の様子をうかがっているふうの人影が見えた。

麻衣はその人物に気づくとドアを開け、中へ招いた。

入ってきたのは、二十歳ぐらいの男の人と、幼稚園児ぐらいの女の子だった。


ソファに案内しお茶を出した。


「吉見彰文と言います。こちらは姪の葉月。見ていただきたいのはこの子なんですが…」

葉月ちゃんは夏らしくセーラーカラーのワンピースを着て、首には包帯を巻いていた。どうやら首に何か不具合があるらしい。

彰文さんが喉に当てたガーゼを外すとその場の誰もが眉をひそめた。

そこから現れたのは赤い湿疹のようなものだった。一センチほどの幅をした帯状の湿疹が、ちょうど喉の真ん中を真一文字に横切っている。肌が爛れてうっすらと血が滲んでいた。

「これだけなら…ただの皮膚病と思って病院に連れて行ったんですが…」

言って、彰文さんは葉月ちゃんの服の前を開けて肩から落とした。白い小さな背中には首の湿疹と同じようなもので、ただし“喘月院落獄童女”と読めてしまった。

「え、ええ?」
「……!」
「これって……」

上からぼーさん、麻衣、綾子が反応を見せる。

「戒名だ」
『戒名だと…?』
「戒名って死んだ人に付ける名前でしょ?」
「喘月院落獄童女…。この馬鹿な子どもは必ず地獄に落ちる…てか?」
「地獄?」
『小さいくせにやらかしたんだなー』
「こんな小さい子が地獄に落ちるほどの罪を犯せるとは思えない。こりゃ相当悪意を持ったやつの仕業だな…」

これが、このとんでもない事件の始まりだった。



呪いの家




[August day1]


俺たちが能登にある吉見家に着いたのは三日後の夕方だった。

結局、綾子とぼーさんが同行することになって、二台の車でトロトロと日本列島を横断した。

長い道のりを経てようやくたどり着いた吉見家は日本海を望む岬の上にあった。




建物の中へ案内され、現れたのは老夫婦だった。

「吉見泰造と申します。これは妻の裕恵」
「よろしくお願いいたします」
「この度はこのような遠くまでお呼び立ていたしまして大変申し訳ございません」
「あ…どうも…」
「よろしくです」
「早速ですがご依頼の内容をもう一度お伺いしたいのですが」
「はい、実は…吉見の家には気味の悪い言い伝えがございまして。代替わりの時に必ず変事が起こるというのです。」
「三十二年前、私の祖父が亡くなったときには家族が八人バタバタと死にまして…その前の代の時も、私の母を残して兄弟五人が次々と…。そして先日の私の父が亡くなった途端、葉月にあのような痣が…。背中の戒名といい、まるで孫の首を切ってやると言っているようで…」

麻衣は葉月のことを思ったのが自身の首に手を当てた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ