波打ち際の青髪の少女

□第一章
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開いた口が塞がらない俺を見て、彼女も目を大きく開き不思議そうな顔をする。

「珍しいのね、貴方。私を見ても驚かないんだもの」

そりゃ驚いたさ。
とも言えず、暗闇の中を睨みつけた。

「お前、なんでこんなところにいんだ。もうこんな時間だぞ。家は?」

するとますます目を大きく開き海を指差し、言った。

「ここが私のおうちよ!ずっとここにいるんだもの」

そんな「当たり前のことよ」みたいに言われるとこっちが困る。
こんなに変わったヤツに出会ったのは初めてだ。
それにしても、ずっとここにいるって、いつからなんだろう?

「ねぇ、あなた。降りてきてお話しない?首が疲れちゃったわ」

言われて気づいたけど、俺と彼女は土手と砂浜でかなりの差がある。
俺はちょっとした好奇心から、土手をするすると駆け下りた。

こうして間近で見て初めて気づく。

まるで波のようにウェーブのかかった長い青髪。
海の色をそのまま映したかのような深い瑠璃色の瞳。
砂浜のように白いその肌、真っ白なワンピース。

なんというか・・・いかにも・・・

「どうかしたの?」

ひょいっと顔を覗き込まれて我に返った。
彼女の白い肌があまりにも近くて驚いた。

「な、なんでもねーよ!」

ちょっと見とれてしまった自分が恥ずかしくて、目を逸らしてしまった。
こいつのマイペースで落ち着いた雰囲気はどうも調子が狂う・・・。

「あっちに座れる所があるわ。行きましょ」

白い腕が俺の腕を掴みとことこと歩き出す。
その白い腕は温かく、もちろんだけど鱗なんてものはない。足も普通の人間のものだ。
やっぱり幽霊でも人魚でもなくただの人間だ、とどこかほっとする自分がいる。

彼女に腕をひかれ少し歩いたところに、大きな流木が転がっていた。
彼女はそこにひょいと腰掛けると、ぽんと自分の座っているすぐ隣を叩いた。

「どうぞ、座って」

(座れっつったって、さっき会ったばっかだし・・・・・・)
俺は少し戸惑ったが少女がどういった理由でここにいるのか、なんだか興味があったので隣に座った。
時間はだんだんと過ぎていくのに、それも気にならなくなっていた。
目の前に広がる海を眺めていると彼女が口を開いた。

「いい所でしょう?海も綺麗だし、動物のお友達だってたくさんいるの」

そういって両手の指を絡め、肘を伸ばしうーんと伸びをした。
暗闇だけど、彼女の生き生きとした表情がはっきり見える。
俺は、一番気になっていることを聞いてみた。

「なぁ、お前、なんでずっとここにいるんだ?いつから?」

機嫌を悪くするかな、と正直少し不安だった。
でも彼女はふ、と微笑むと優しい顔で答えてくれた。

「ある日、目が覚めたらここに居たの」

驚きすぎて声が出なかった。
目が覚めたらここにいた・・・?
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