新訳〜道成寺縁起〜
□代償の先の愛
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清姫事件から数ヶ月・・・
銀時はあれから何もなかったように、万事屋の仕事をしていた。
吉原に置いている二羽と三羽にもよく顔を見せに行きながら過ごす銀時は、外面は前に戻ったように見えたが・・・・
実際は、内心様々な思いが交差していたのである。
もう高杉と関係は持たないと決め、清姫にも身を捧げて彼を殺そうとまでした。
だが、結局彼の素直な謝罪の言葉に揺れて、自分がこれまでしてきた行為に絶望したのだ。
だから清姫と共に死のうとまでしたのに、再び高杉に救われた。
そんな高杉は生死に関わるような怪我までしたのに、あれから何も言わずにいなくなってしまった。
本当に・・・・
一言さえ残さないで。
このまま自分達は離れるのだろうかと思うと、心に鉛が入ったように重く苦しくなった。
けれど間違い無くこんな結果を作ったのは自分で・・・・
高杉に愛想を尽かされて当たり前なのだ。
もう――・・・終わったのだ、高杉と自分の関係は。
もう、何も残ってなどいない。
彼との子も死に、また最後に残っていた憎しみという感情まで清姫と一緒に消えてしまった。
「もう何も・・・残っちゃいねェんだ。」
銀時の囁きは、空に溶けて消えてしまう・・・。
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