歌劇とあなた
□gets one step further
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未だドキドキしている胸をそのままに、ザックと一緒に部屋を出た。
すると、そこは人に溢れ返っていた。
ザワザワガヤガヤ、、、
「うわ、凄、、。あたし田舎町出身だから頭痛くなりそう、、。」
「大丈夫、名無しさん?無理しちゃいけないから、少し休む?あと十分はあるし、、。」
「いいよ^^;心配しないで^^;。」
そういうと、少し不服そうながらも納得したようだった。
「ってうわっ!」
肩がこすれあうどころの距離ではなくて、普通にぶつかってしまう。
気づいた時には人ごみに流され、ザックと離れてしまい、挙句の果てには、2メートルくらい遠くに来てしまった。
「名無しさん!!」
「ザック!!」
「!!!!」
自分という存在が、人混みに溶かされるような気がして、怖い。
けど、ザックがいる。
あの綺麗なターコイズブルーの瞳が、こちらを向いている。
私を見つけたみたい。
足早に近づいてくるザック。人混みをいとも簡単にすり抜けている。
ザックに速く近づきたくて、隅っこに隠れていたのに人が通る道に出ると、又人混みに流されかけた。
だが、“かけた”で止まった。
「お、おいっ!!」
ザックが、私の腕を掴んで引き寄せた。
「わっ!!…ザック!!。はぁ…。びっくりしたぁ…。」
「びっくりしたのはこっちさっ!!まさかこのくらいの道ではぐれるなんて!」
ドキッ!
心拍数が下がらない…。
ドキドキが止まらない。
でも、安心する。
「手、繋ごう??。」
優しく、問い掛けるようにそういうザック。
その間にも、ドキドキどころかバクバク言ってる私の心臓。
ジル役の会場がどこか探しているが、ふと見上げると、ザックと目が合う。
ターコイズブルー色の鮮やかな瞳に、吸い寄せられるような、瞳に見つめられる。
「駄目かな??」
「い、いいよ??…//」
ザックが私の手をとる。
その瞬間、顔に熱が集まるのが分かる。
顔が赤くなってるっ!!!
み、見ないでよぉっ!!
そんな私の意志にも関係なく、笑顔のザックと目が合う。
「ジル役は向こうだ。」
爽やか過ぎるような笑顔で、案内してくれる。いつの間にこんな風になったのだろう。まだ、出会って数時間くらいなのに……。
「こんなにたくさんの人がいるのに、そんな中で12人に生き残るなんて…」
「不安??」
余裕の笑みで訪ねてくるザックは、どこか世界が違う人に見えた。
「かなり…;;。ザックは余裕そうね;;。」
「僕だって緊張するさ、もちろん。さぁ、ここだ。先に終わったら、待ってる^^名無しさんも待ってて^^」
「ええ^^、、でも、最悪な結果が待ってたりして…;;」
「余計なことは考えない^^!ありのままの名無しさんを審査員に見せつければいい。大丈夫^^僕がついてる!。」
…ありのまま、か。
果たしてありのままというのは、どんなものなんだろう。
でも、ザックと一緒にこの作品に出演したい。
───そう、思った。