私的世界

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(…ここはどこだろう)


ここに来る経緯も前の事も


(思い出せない…)


今わかることは目覚めると木々が生い茂る林の中いて。目の前には………仮面を纏った化け物。


"美味ソウナ匂イガスルナ"


化け物は私を見てから舌なめずりした。はっきり言って、気持ち悪い。


"ワシガ恐ソシクナイノカ小娘"

(そりゃ怖いさ。…けど)

「腰が抜けちゃいまして」


ここで余裕そうな笑みを浮かべてられる自分に拍手を送りたい。


それでもこの状況が変わるはずもなく。


"ホウ、ソレハ好都合。デハ死ネ"


化け物がゆっくりと腕を振り上げる。動けない私は諦めて目を閉じた。


(短い人生だったな。いや、短いかもわかんないや)


でも、いつになっても痛みは襲ってこなくて。


"ギャアアァァァァ"


変わりに聞こえた化け物のものと思われる声を引き金に私は目を開けた。


そこには灰のように消えていく化け物と、それをよそにへたりこんでいる私に手を差し延べる銀色のきれいな髪をなびかせた少年がいた。


「怪我はないか?」


私はこっくりと頷くと少年の手をとり立ち上がった。


「あなたが倒したの?」

「あぁ。それが仕事だからな」

(子供がこんな仕事を?)

「それにしても、なぜ一人でこんなところにいた?」

「…わからない。目が覚めたらここにいたの」

「ここに来る前まで何をしていた?」

「わからない。覚えてないの、何一つ」


私のほうが背が高いのに少年のほうが大人っぽく見えて、問い詰めるような声と翡翠色の瞳が少し怖かった。


「記憶喪失か…」

「きおく…そうしつ?」

「お前自分の名前は覚えてるか?」

「空木…泪です」

「そうか。俺は日番谷冬獅郎だ」


でも、その微笑に一瞬にして警戒心が解けた自分はかなり現金だと思う。




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