私的世界
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林を出て冬獅郎くんに覚えている限りのことを教えた(といっても名前以外はかなり朧げ)。言い終ってからの冬獅郎くんの第一声は
「じゃあ住む場所も無いわけだな」
「…ですね」
「…はぁ。ついて来い。住む場所探してやる」
そう言われてあとを追うこと数分。とある家に入ると小柄な可愛らしいお婆ちゃんが一人。
なんでも冬獅郎くんが前に住んでいた家らしい。お婆ちゃんと話し込んでいた冬獅郎くんが振り向いて手招きをした。
「住んでいいってよ。挨拶しとけ」
「あ、空木泪です。お世話になります」
「よろしくね。泪」
婆ちゃんの優しい声に自然と顔が綻んだ。
そのあとはお婆ちゃんと冬獅郎くんの雑談を聞いたり、この世界"尸魂界"について教えてもらったり。
(あの化け物、虚っていうのか。あぶな……冬獅郎くん来なかったら私虚のランチですか)
「それにしても…珍しい髪色してるな」
「え?あ、これ?」
そう言って私が手にとったのは長めの自分の髪。珍しいもなにも変なのだ。
水色なんて普通ならありえない。
「あぁ。それに目の色も」
「うん。菫色って言うのかな?生れつきこうらしくって。変でしょ」
しかし目の前の彼の髪も瞳も普通ではないのはわかる。でも私のなんかより
「冬獅郎くんのはきらきらして綺麗だよね」
「………」
「冬獅郎くん?」
「照れてるんだよ。褒められた事なんてなかったからねぇ」
「婆ちゃん…。余計なこと言うなよ」
冬獅郎くんはがしがしと頭をかいてそっぽを向いたまま呟く。…照れ隠し?
「それに…変だなんて自分で言うな。お前のだって綺麗だから」
「…あ、りがと」
(うわ。…照れるのわかるわ)
それからは沈黙が続いていたたまれなかったのか冬獅郎くんは帰った。
お婆ちゃんだけころころと笑っていた。
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