拍手作品(連載予備軍)
□拍手6「願いの人形」
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小さな村に一人の少女がいた。
少女は病弱でいつも病室から外を眺めていた。
「私も空を飛びたいなぁ・・・」
それが少女の口癖だった。
ある日、両親がくまのぬいぐるみを持ってきてくれた。
「この子はお前の友達だ。仲良くするんだぞ」
少女はそのぬいぐるみに「ミソラ」と名付けた。
少女はミソラを抱きながらテレビを見ていた。
そこには、煌びやかなケーキが映っていた。
少女は今まで一度もケーキというものを食べたことがなかった。
「一度でもいいからケーキ食べてみたいなぁ。ねぇ?ミソラ」
うっとりとした目でテレビを見ながらつぶやいた。
次の日、お見舞いに来てくれたおじさんがテレビに出ていたようなケーキを持ってきてくれた。
少女は大喜びでそのケーキをみつめた。
「綺麗・・・食べちゃっていいのかしら。なんだか勿体ないわ」
「ハハハ。しかし速く食べてしまわないと溶けてしまうよ」
おじさんは笑って少女の前にケーキをだした。
少女は恐る恐るケーキを口に含んだ。
少女の顔はみるみるうちに笑顔になっていった。
「こんな美味しいもの初めて食べたわ!
おじさん、ありがとう!」
その日の夜、興奮を抑えられないままミソラと話していた。
「今日はとっても素敵な日だったわ。とっても綺麗で甘くて美味しくて、きっとあれが最初で最後のケーキね。だけど・・・だからこそ外へ・・・大きな海や空を見てみたいのに」
少女は悲しそうにミソラに言った。
"ねぇ、ミソラ。これは私とあなたの内緒話よ。私はね、もう長くないの。パパ達に言ったら皆悲しむもの。だから二人だけの内緒話よ"