一般向け小説置場

□辞令は大迷惑っ!
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「き…局長、今何と…!?」
「いや、実は御剣検事に海外研修の話が来ているのだよ。」
海外研修…昔の私なら、きっと喜んで承っただろう…だが、しかし!
今の私にとっては『悪夢のプレゼント』以外の何物でもない!
この事を告げたら、彼はどうなる…!?

『大事な話がある。今日中に会えないだろうか?』
メールを送信した。
暫くして、返信が来た。
『メールでは書けない事?それなら、事務所に来てくれるか?残業があるから…』
直接言って、成歩堂を苦しめやしないか…悲しませやしないか…そんな事を考え込んでしまった。
だが、メールで告げるより、直接会って話したいという気持ちがあった。
『では、君が終業次第事務所にお邪魔させていただくとしよう。』
『わかった。待ってる。』
短い返信の文字。
これが、海外研修があると告げた後の返事であれば良いのだが…。

   *   *   *

少し早目に成歩堂の事務所には着いたものの、何をどう切り出すべきか悩んだ。
全く…何故この様な時期に海外研修が…!
成歩堂…君を置いて行かなければならないのは非常に心苦しい…。
〜〜♪〜♪〜〜♪
『ピッ』
「私だ。」
[あ、待たせてごめんな。今やっときりがついたよ。今どこ?]
「間もなく君の事務所だ。少し早く向かったのだ。」
[そっか、わかった。]
すぐに電話は切れた。

あぁ…たった数秒、それでも君と語り合えた幸せを、私は今噛み締めている。

「いらっしゃい、御剣。さ、どうぞ。」
中へ迎え入れてくれた成歩堂の笑顔が、心をあたたかく癒してくれる…。
「…どうしたんだ?浮かない顔して…」
心配そうに覗き込む成歩堂が、愛おしくて堪らない。
成歩堂…離れたくない…!
「わっ!?」
つい…無言で抱きしめてしまった。
「な、何だよ急に…何かあったのか?」
心配そうな声で尋ねながら、優しく抱き返してくれる成歩堂の手の温もりに、漸く落ち着きを取り戻した。
「すまない、取り乱したりして…実は…」
私は事の次第を明かした。

「そ…そんな…せっかく僕達…」
…やはりショックだったらしい。
暫く視点が定まらない様だったが、
「御剣は…行くって決めたのか…?」
不安そうに見つめる成歩堂が愛おしい。
「私は…正直な所、気が進まない。海外研修に行った所で、成歩堂とのやり取り以上に白熱出来る公判は期待出来ないだろうしな…君と繰り広げる公判は、たまに痛手を負うが『真相解明』という点に於いて、他の弁護士では到達叶わぬ領域に達している様でな…やはり私は、君と居られるだけで幸せなのだ…。」
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