一般向け小説置場

□夢のチカラ
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「…どうしよう…見える所に貼れって言われたけど…まぁ、アパートに貼るなら良いかな…?」
こればかりは、流石に事務所になんて貼れない。

ましてや、一応は〔恋に関する事〕だからなぁ…。

《御剣が、普段と違って余裕が無い位に僕を好きになりました。神様、ありがとうございました!》

しかし、実際に書いたら…。
「うわ、何だコレ!恥ずかし…」
思わず丸めたくなったけど…真宵ちゃんがあれだけ奨めてくれたんだから、やってみる価値はあるんじゃないか…?
「ま…まぁ、ハズれても仕方ないし…」
…そうだ。
もしハズれたら、それはフラれた事に…。
「…た…立ち直れるかな、僕…」

   *   *   *

検事局、御剣の執務室。
「御剣−。」
『借りたい資料があるから』と事前に連絡したのに、いざ到着してノックしても返事がなかった。
「御剣−。入るよ−?」
ドアは開いていた。
室内には御剣の姿はなかったけど、紅茶か何かの、優雅で華やかな…それでいて全くイヤミな雰囲気が無い、何とも落ち着く香りがほんのり漂っていた。
「こんな立派な部屋にデスク…いいなぁ、御剣の執務室って…」
御剣が居ないのを良い事に、立派なデスクについた。
回転椅子に座り、しばし遊園地のコーヒーカップよろしく、クルクルと回って楽しんだ。
「…この部屋みたいに、綺麗で立派な事務所を持てたって書こうっと。」
古くて軋む事務所の椅子と違って、あまりにもスムースにクルクル回るから、つい楽しくなって少し調子に乗ってしまった。
「居心地いいなぁ…いっその事、御剣が海外研修に行ったりしてる間、借りちゃおうかな〜、事務所の代わりに。」
「…それは確実に『出来ない相談』というものだろう…」
「そうだよなぁ、だってここ検事局だし…って、うわおっ!い、いつの間に戻っていたんだよ!」
「む…君が実に楽しそうに、椅子で回転して遊んでいた辺りか?」
「ほ、ほぼ始めじゃないか!」
い、いかに目を閉じて回転していたとはいえ…御剣が戻ってきたのも気付かずに遊んでいたのを見られてなんて、我ながらかなり間抜けで恥ずかしいっ!
「これが頼まれていた資料だ。地下の書庫にあったのでな、探すのに少し手間取ってしまったが…。」
「あ、ありがとう…」
資料を受け取って、中身を確認しようとしたら。
「立ったままというのも何だ。そこにかけたまえ。」
「ああ、ありがとう。」
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