一般向け小説置場

□「逆転裁判カップリングで20のお題」
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失われた約束(不特定、シリアス)

「また明日ね」
元気に声をかけたら。
「うむ…」
とだけ返された。

いつもと変わらないやり取りの翌日、君は学校に来なかった…それから君は、何も言わずに転校していったから、僕は泣くしか出来なかった…

   *   *   *

「私の夢は、将来、父の様に立派な弁護士になる事だ。」
幼かった私は、敬愛していた父の様になる事が夢だった。

だが、あの悪夢の様な出来事のせいで、私は自分の夢への扉を、永遠に閉ざしたのだと、信じて疑わなかった。

成歩堂は、そんな私に救いの手を差し延べてくれた。
最初で最後の『御剣怜侍弁護士』の舞台を用意されてから、私は自分の夢を叶えてくれた彼の傍に居て護っていくと決めたのだった…

それなのに、私は君が一番辛かった時に傍に居てやれなかった…!
悔やんでも悔やみ切れない愚かな私を、それでも成歩堂は許してくれた…
その懐の広さは、どこまであるのか…?

   *   *   *

「男が泣くのは…全てが終わった時だけ、だぜ…!」

あの日、確かに俺はあいつに言った。

だが、俺は一度だけ『全てを終えなかった内』に、ガキみてぇに泣いちまった…
あいつ−綾里千尋−を亡くしたと知った時は、始まりにもなっていなかったというのに…

逆恨みで散々迷惑をかけた以上、全てが済んだなら死んで詫びるしかないと思っていた俺に、
「生きてさえいれば、どんな罪も精算出来ます。でも、死んだら何も出来なくなるんですよ。」
と、微笑みかけてくれたあの男…

あいつは本当に不思議な男だ…流石は、あいつの弟子、だぜ…。

   *   *   *

「リュウちゃん…好きです…」
…ええ、本当でした。
もちろん今も…
「僕も好きだよ!」
あぁ…なんてあたたかい笑顔…優しく包む様に握って下さる、私より大きな手…。
私は、どんなに貴方を慕っていたか…。
本当の私を見ていただきたかった、お姉様の代わりではなく…!
でも、お姉様が拘留されてから、私は貴方に会わないと決めました。
貴方を傷付けたくなかったから…
…結局果たせずに、この様な事にまで巻き込んでしまって…それでも許して下さった貴方が、私には救いの光に見えました。

…リュウちゃん…貴方を裏切った私は、許されてはいけないと思いながら、それでも昔と変わらない笑顔が、心を満たして下さる事に喜びを感じてしまうのです。
まるで、太陽の様にあたたかい、あの笑顔が…

   *   *   *

「成歩堂君、貴方の成長を、ずっと傍で見守るからね…」
…いつだったか、私は貴方に約束した。
だけど、あの日…突然、二度と直接触れられない世界に行かされてしまった…。
常日頃、『裏切りと毒薬が何より許せない』と明言していた貴方に、私は嘘という裏切りをしてしまった…!
それでも、死した私を今も師として慕ってくれて、頼ってくれた。

貴方の心の大きさは、まるで本当に宇宙の様だわ。
いつか貴方は皆からこう言われるわ、
『宇宙の様に、掴み所の無い男』
って…


End

※公式設定で、そんな風に言われていたので…
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