一般向け小説置場

□「逆転裁判カップリングで20のお題」
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正反対の二人(響オド)

例えば…俺は『貧乏な新米弁護士』。
でも、あの人は『金持ちな天才検事、牙琉響也』だ。

例えば…俺はヒマを持て余す様な事務所で仕事をしている。
でも、牙琉検事は忙しすぎて大変そうだ。

例えば…俺は静かな音楽が好きだ。
でも、牙琉検事はハードロッカー。

例えば…俺は発泡酒も平気だ。
でも、牙琉検事は少し高いイメージの酒が好きだ。

例えば…俺は猫が好きだ。
でも、牙琉検事は犬が好きだ。

例えば…俺は牙琉検事に、片思いしてる。
でも、牙琉検事は…誰が好き?

「…はぁ〜…」
ヒマに任せて、何気なく自分で書いた『牙琉検事との違い』を見て、思わずため息が出た。
「そんな色っぽいため息ついて、どうしたんだい?オドロキ君。僕を誘ってるの?」
とんでもない発言をかましながら、成歩堂さんが現れた。
「な、何言ってるんですか、成歩堂さん!そんなつもりありませんから!」
メモをくしゃくしゃに丸めて捨てた。
「牙琉検事の事でも考えてた?そういう時のオドロキ君て色っぽいんだよね。」
知らなかった?と、笑いながら、これまたとんでもない発言をしたもんだから、俺は危うく口に含んでいたコーヒーを噴き出す所だった。

   *   *   *

「こんなんじゃ、俺…牙琉検事と合わないんじゃないかって…」
思い切って成歩堂さんに相談してみたが、もしかしたら茶化されるかも…なんて思ったが。
「わかってないねぇ…正反対なら、お互いに足りない所を補い合えるじゃないか。」
「…え?」
意外とまともな、しかも簡素な返答が返って来たから、面食らってしまった。
「僕も同じだったからね…」
という独り言が、小さく聞こえた。

その夜、俺は牙琉検事の携帯に、自分から電話してみた。
〔もしもし、オデコ君!どうしたんだい?〕
何故か、凄く高いテンションだった。
「あの…すみません。お忙しい所…」
〔全然かまわないよ…君から電話くれるなんて、あんまり珍しいから…嬉しいよ、とっても…〕
あまりに優しい響きが、俺の鼓膜と心をくすぐる。
「あの…俺…」
〔ん…?どうしたんだい?〕
優しく促されるが、俺はつい緊張で固くなってしまった。
でも、これじゃダメだ!と、意を決して話し出した。
「あの…その…お、俺は、牙琉検事の事…す、好きです…!」
〔お、オデコ君?!〕
…やっぱり面食らってしまった様だ。
でも、せめて気持ちは伝えたかった。
「どんなに周りから『正反対だから合わない』って言われても、それは『お互いの足りない所を補い合う為』なんだって、そう思って見ようって…ですから…」
〔オデコ君…それは…君の本心かい?〕
ふと、優しい響きが俺の話を遮った。
「…はい…好きなんです…」
拒絶される…そう覚悟した瞬間。
〔良かった…僕も、オデコ君の事…好きだよ…〕
「…へ?」
まさか…正反対な俺達なのに?!
〔…信じられない?〕
「い、いやいやいや、そ、そんな事!大丈夫です!信じます!」
〔あはは、凄く大きな『大丈夫』だね。やっといつものオデコ君に戻った。僕はいつもの君が、大好きだよ。〕
胸の奥が、じんわりとあたたかくなった。
〔今から…会いに行っても良いかい?〕
あの忙しい牙琉検事が、俺に会いたいなんて…
「い、今からって…良いんですか?」
〔うん。君に…凄く会いたいんだ。〕
そんな甘い声で、囁く様に言われたら、俺…!
「俺も…会いたいです。」
〔良かった…!今どこ?すぐに行くから!〕
事務所にいると告げたら、すぐに電話は切られたけど、これから俺達はどうなるんだろう…期待と不安でいっぱいだった。

その後、バイクで颯爽と現れた牙琉検事から、真紅の薔薇を一輪と、甘いキスをプレゼントされたのは、成歩堂さん達には内緒…

   *   *   *

正反対な俺達の共通点。
『お互いが、お互いを好き』な事…



End
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