一般向け小説置場

□〔憧れの人〕と〔好きな人〕
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俺は王泥喜法介、新米弁護士。
憧れの人は、牙琉霧人先生…だった。

   *   *   *

六法全書の在りかさえわからない位に雑然とした〔成歩堂なんでも事務所〕内を見回した俺は、ソファーで寝そべっている散らかした張本人を睨みつけた。
「あー、もぅ!どうしてこうもこの人は…!こんなの、逐一片付けていけば何でもないのに…!」
すやすやと安らいだ寝息を立てて、胸をゆっくり上下させている彼は、成歩堂龍一さん…俺が〔昔ちょっと憧れた〕、元弁護士・現ピアノの弾けないピアニストで、無敗のポーカープレイヤー。

牙琉先生に連れられて見学していた法廷で見かけた、あの凜とした眼差しと、堂々と弁論する時のカッコ良さ…常識に捕われない発想から起こす、信じられない様な逆転劇…そして何より…依頼人を絶対に信じるという信念と、法廷から出た時に見せる、思わず誰もが〔ほっ…〕とする様な−そこが先生とは少し違う、とても優しい−あたたかな笑顔…その二つが、俺の心を秘かに捕らえて離さない。
いや…離れたくないのは俺の方だ…

しかし…成歩堂さんが法廷から去って、先生の事務所で再会出来た時には、既に〔『真実を見据える眼差し、不正を許さない指差し、あたたかい笑顔が三種の神器』だった、過去の面影今いずこ〕と言った具合…つまり今の『不精髭、ニット帽、ジャージ姿が三種の神器な成歩堂さん』だった…

「昔はカッコ良かったのになぁ…」
片付けながら、時折成歩堂さんの寝顔をチラチラ見た。
いつものふてぶてしい笑顔が消え、小さく口唇が開いていて、仰向けの体勢だからか目元も緩やかな弧を描いており、不精髭なんか生えてるクセに、少し幼く柔らかい雰囲気になっていた。
ニット帽を被っていない姿が珍しく、短いながらも黒くて艶やかな髪がさらっと額にかかっていた。

「…(ごくっ…)」
か…カワイイ寝顔だなぁ…みぬきちゃんも言っていたけど、本当に猫みたいだ…普段のあのふてぶてしい態度や、素っ気ない態度を知っていればこそ、このギャップがまた…

…あれ?
俺、今何考えていた…?
いやいやいや、自分より年上の男をつかまえて『カワイイ』とか、有り得ないだろ!

 
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