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□億千万分の一の思い出〜『本物の』ヒーロー編〜
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「そうよなぁ…お前ミラクル仮面好きだったよなぁ…」
毎度毎度、矢張からの僕をエサ(というかダシ)にして御剣を呼び出しての飲み会に、御剣は諦め半分で参加してくれた。
金の無い二人が、店に迷惑をかけない様にとの判断らしい。
「ミラクル仮面?」
「当時は人気あったんだけど、続編は出なかったんだよ。」
「しかしまぁ…成歩堂は弁護士っつー『ヒーロー』になったし、何より御剣っつー『本物の』ヒーローがいるじゃん。」
《ぶっ!Σ///;》
思わず、口に含んでいたサワーを矢張に向かって盛大に吹き出してしまった。
「だ、大丈夫か?成歩堂…」
「気遣う相手が違うぞ、御剣!俺被害者だぜ?!」
「被害届けは支払いをしてからにしたまえ…」
「うぐっ…!Σ;」
途端に大人しくなった矢張は、酒の臭いがついたままでバイトする訳にもいかないと、早々に帰った。
僕も御剣も、特に大きな案件は無いものの、明日は仕事はあったからすぐ帰る事にした。
「しかし…矢張が言った事…本当か?私が君の『ヒーロー』だ等と…」
運転しながら話している為、当然助手席に座った僕の方は向かなかったが、気配は僕を伺うみたいに向いているのを感じた。
「う…うん…///;ほら、あの学級裁判で、僕の事…真剣に弁護してくれただろ?」
「む…あれは、君が嘘をついたりしない性格だと知っていたから弁護したまでだ。あれが矢張なら、ああまで信用したかどうか…」
少し酷い話に苦笑しながらも、御剣が僕をそこまで信用してくれていたのだと思うと、くすぐったい様な嬉しさがわいた。

「さあ、着いたぞ。」
僕のアパートの前まで送ってもらってしまい、申し訳ない気がした。
「ありがとう、御剣。いつもゴメンな、送ってもらったりして…」
「いや…君を送るのは、嫌ではない。」
そのまま帰すのも気が引けた。
「あ、あのさ…少し寄ってかないか?たいした物は出せないけど、紅茶くらいは…」
御剣は一瞬ほんの少し驚いた顔をしたが、すぐにいつもの嫌味な笑顔で答えた。
「気持ちだけ頂いておこう…済まないが、明日は少々早いのでな…また別の機会に、とだけ約束しよう。」
「そっか…ゴメンな、無理に引き止めたりして…じゃ、おやすみ。気をつけてな。」
仕方ないと割り切って、今度は素直に送り出した。
「僕だけの『ヒーロー』…か…ある意味、言い得て妙だな…」
遠ざかる御剣の車をいつまでも見守りながら、今夜の矢張の言葉が成歩堂の胸に響いていた。



End
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