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□二人と二匹のスウィート・ハロウィン
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『あれ?もう飼う決心したのか?』
「勘違いするな。あくまで次の引き取り手が見つかるまでの間、一時的に預かるだけだ。」
『あ、ありがとうな御剣!よかったなぁ、なる!』
「…なる?」
『みぃ。』
小さな鳴き声。
『おう。コイツ牡だし、成歩堂の髪と同じ色だから。なぁ、なる。』
『みゃぁ。』
「ま、待て。何故子猫がそこにいる?」
『さっき写メ送っただろ?』
「その場で撮ったのか!」
『モチロン。』

ピンポン。

「む?」
インターフォンを確認すると。
『お〜い、開けてくれ〜。』
『みゃぅ。』
携帯とインターフォンの両方から、矢張と子猫の声。
些か頭痛を覚えた。
エントランスの解錠をしてやると、矢張はいつものだらし無い笑顔でノコノコとやってきた。
「ほい。これはトイレの容器と三日分のトイレ砂のセット。それから、これが餌の器で、これが水用。それと…」
と、矢張に説明されながら玄関先に次々とペット用品が並べられた。
「待った!」
法廷でツッコミを入れる成歩堂さながらのストップをかけた御剣。
「貴様…何故そこまで用意していた?」
「道具はちゃんと揃えていった方が親切ってモンだろ?どうせお前、ペット用品なんか無いだろうし。俺って親切だなぁ。そう思うだろ?なる。」
「みぃ。」
タイミング良く返事をする子猫に対して鼻歌さえ歌いそうな機嫌の良さを見せ付ける矢張に、何故か多少の怒りを覚えた。

その時。

ピンポン。

またしてもインターフォンが鳴った。
確認すると…。
「な…!」
なるの名前の基になった、成歩堂がいた。

   *   *   *

「よかった、僕もこの子猫が気になっていたんだ。飼えないと思うと余計に心配だったから…。やっぱり可愛いなぁ…。」
ペット用品もセッティングし終えて一段落した三人と一匹は、御剣がいれた紅茶(子猫には水)を飲んで一息入れていた。
「なる。こっち来い。」
「みゃぅ。」
矢張が呼ぶと、まるで犬が主人に従うかの様にやってきた。
「賢いなぁ、まだ子猫なのに!」
成歩堂は嬉しそうに言った。
「人懐っこいんだよな、コイツ。ガキん時のお前そっくりだよな。」
子猫と遊んでいる矢張と成歩堂が、多少羨ましくも嫉妬心を燃やし、
「……なる。」
と呼ぶと。
「みゃぁ!」
小さい身体に元気いっぱいの返事をして、飛ぶ様にやってくると御剣の膝で背中を丸くして座り込んだ。
「うわぁ、可愛いなぁー!御剣、僕も呼んで良い!?」
愛しい恋人…成歩堂が子供の様に、可愛らしく瞳をキラキラさせて頼むものだから、つい赤面しそうになった。
「む、うむ…」
「ありがとう!おいでー、なる。」
しかし、なるは御剣の膝で丸くなったまま耳をピクッと動かしただけで、動こうとしなかった。
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