一般向け小説置場

□逆転、逆転、また逆転
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どうしよう…御剣の声が、あの台詞が、僕の中でずっと渦巻いている…。
『成歩堂…君が好きだ…』
御剣…
『成歩堂…好きだ…』
御剣…
『成歩堂…』
御剣…
「なるほど君!!」
「…へっ!?」
急に意識が現実に引き戻されると、目の前に居たのは真宵ちゃん。
「さっきから呼んでたのに…何ぼんやりしてるの?!顔も赤いし…風邪?」
「ん?…ちょっと、ね…」
典型的な『恋の病』だよな、コレって…しかもかなり重症だなぁ…。
どうしてこう、僕って『好きな人』にのめり込むタイプなんだろう…参ったなぁ…。
「…なるほど君…何処かで頭打った?何でニヤニヤしてるの?…なるほど君?なるほど君!おーい!」
「…へっ?!」
今日はずっとそんな調子だったから、強制的に休業を言い渡された。
面目無い…。
それでも、御剣の恋人になれた嬉しさは冷めなかった。

「御剣、今度の日曜だけどさ…何か予定立ててるか?」
『君が見に行きたがっていた舞台のチケットを二枚手配してある。今日か明日には手元に届く筈だ。』
「本当か!?うわあ…ありがとう!あの舞台、僕も御剣と行きたかったんだ!」
御剣の細やかな心遣いが、凄く嬉しい。
たまに小言も言われるけど、僕を想っての台詞だからと解るから嬉しかった。

だけど、始めはこんなに幸せ気分いっぱいだったのに、どうやら僕は『大好きな人と平穏無事な人生を送る』のには、つくづく向いていないらしい。
もし御剣と僕との関係がバレたら、周りの人達に反対されるんじゃないかって、少しずつビクビクし始めて来た。

「成歩堂、お前最近付き合い悪りぃよな…いつも忙しいとか言ってさ…」
例によって、彼女にフラれた矢張が事務所に押しかけてきて、今夜呑もうと誘ってきたのを断った直後の台詞がコレだ。
「仕方ないだろ?僕にも用事があるんだから…」
「冷てぇよなぁ〜、本当冷てぇよ〜。お前が辛い時散々付き合ってやったのに、いざ俺が辛くなったら突き放すのかよ〜?」
またそれか…それを言われると痛いな…。
今日は御剣と夕飯食べに行く約束だったんだけど…。
「じゃあ、相手に相談してくるよ。ちょっと待っててくれよな?」
席を外して携帯にかけた。

「あ…もしもし?ごめん、今忙しいか?」
[君から電話してもらえるなら、多少は構わん。で、どうしたのかね?]
「あのさ、今矢張が来ていて、話したい事があるからってしつこいんだ。僕も約束を最優先したいんだけど…どうしよう?」
[…ふっ、君は情が厚いからな。しがらみに弱いとは知っている。君さえ良ければ、私も一緒に行こう。矢張との話が済めば、その足で他所に行けば良いだけだ。]
「そ…そうか、そうすれば良いのか!」
「何だよ成歩堂!お前いつの間に恋人出来たんだよ!幸せいっぱいなツラしやがって見せつけてんじゃねえよコノ〜!!」
「こ、こら矢張、近所迷惑だぞ、叫ぶなって。」
「電話口の可愛こちゃ〜ん、コイツはやめて俺と付き合わない〜?」
[…矢張、私は貴様と付き合わなければならない理由はない。]
「ぎゃあっ!何だ、御剣かよ!」
「矢張、叫ぶなってば。」
「どういう事だよ成歩堂、お前恋人と話してたんじゃなかったのかよ!」
「矢張には関係無いだろ!?御剣ごめん、また後で…!」
半ば強制的に通話を中止した。
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