一般向け小説置場

□逆転、逆転、また逆転
2ページ/7ページ

結局、資料整理に手間取った為、終業時間を1時間オーバーして漸く御剣と合流出来たのは、心配した御剣が迎えに来てくれた車の前だった。
「ごめん、遅くなって…」
迎えに来てくれたのが嬉しかったのを、顔に出さない様に言うのは辛いな…。
「いや、無理を言ってすまない…」
「いやいや、僕のせいで遅くなったんだから、御剣が許してくれるなら帳消しだよ。で?どんな話なんだ?」
「む…まぁ、とりあえず車に…」
…この期に及んで、まだ濁すか。
「うん…」
促されるままに乗り込んだけど、一向に話す気配は無い。
「…」
再び、綺麗な顔を眉間のタテジワで台なしにしながら、何度も口を開いては閉じた。
…さては、切り出し方に困っているな?
「…で?何の話なんだ?」
「む…」
そんなに勿体振ると、いい加減じれったいぞ?
「もうすぐ目的地に着く。それまでは…」
「そんなに切羽詰まった話なのか?」
何だろう…そんなに言いにくい事なのか?
まさか御剣、何か病気に罹ったとか!?
それで言いにくいのか!?
「御剣…まさかとは思うけど…何か、ひどい病気なのか?」
「違う。何故そうなる。」
「何だ、違うのか…よかったぁ…」
ほっとした…もし病気だなんて言われたらどうしようかと思ったよ。
「成歩堂…」
「ん?」
考え込んでいた時、急に名前を呼ばれたから聞き返したら。

「…君が好きだ。」

真っすぐ前を睨む様に見据えながら言われた。
「…へ?」
う…嘘だ、嘘だ、嘘だろ!?
御剣が僕を…『好き』だって…?!
いくら僕でも、こんな都合の良い聞き違いをするなんて…!!
「ちょっ、ちょっと待った!今何て言ったの!」
「…そうか…君は私の告白を、無効にしたいのだな?」
「へ?いやいや、だって今の…僕が聞き違いしたんだと…え?あれっ?ええ!?」
混乱する僕に、御剣は深い溜め息を吐いて言った。
「…良いか、もう一度だけ言おう。」
御剣が、車を停めて振り向いた。

ドキッ…!!

心臓が痛くなりそうな程跳ねた。
顔が熱い。
呼吸が上手く出来ない。
御剣が僕を見つめている…熱を孕んだ真剣な眼差しで…。
こんな至近距離で、見つめ合うなんて…幸せ過ぎて死ねる…。

そう思ったのに、御剣は綺麗な声で、更に幸せを与えてくれた。

「…成歩堂…君が好きだ。私と…いつまでも共にあって、幸せを分かち合う仲になって欲しい…。」

うわ…まるでプロポーズみたいな台詞…。
「成歩堂…返事を…」
信じられない、信じられない、信じられない!
まさか、あの御剣が僕の事…『好きだ』と言ってくれたなんて!!
「僕…僕は…その言葉をずっと言いたかったよ…!」

   *   *   *
 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ