ホ宝物展示場ホ書庫

□HAPPY DAYS
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バケットの先端を避けるみたいに少しエビぞり気味の体制でそれを支えながら、何とか落とさないように持ち直して…そのまま空へと顔を上げた。

「う…わ…」

視界一杯に広がる、吸い込まれそうな程に見事な、蒼い蒼い空の色。
雲ひとつない蒼穹の空。ふりそそぐ日差しは不思議にそんなに眩しくなくて…やわらかな風と相まって、優しくぼくの全身を包み込む。

あまりに見事なその光景を映しながら…心の中に在る特定の場所が、ちいさく、とくん、と波打った。

(やっぱり…お前と一緒にいたかったな…)

浮かぶ恋人の顔を思いながら、宙に向かいひとつため息を零した、刹那、





まるでそんな気持ちを掬い取るように――突然、本当に唐突に、

視界いっぱいの青空が――男らしい繊細な美貌で塞がれた。





「―――び、びっくりした」

まだ心臓がバクバク言ってる。

「…そんなに…驚くほどのことでもないと思うのだが…」

思わず荷物を全部取り落としそうになったぼくごと支えながら、人を心底驚かせた張本人が不思議そうに聞いてくる。
ぼくに驚かれたのが心外だったのか、眉間のシワが思いっきり真ん中に寄っていた。

「……お、お前、どうしてここに?…急に、どうしたの?」
「キミの帰りが遅いのでな…心配になって出てきたのだ」

心配って――ぼく、買い物に出ただけなんだけど。

「ふーん。じゃ、書類の整理はもう終わったの?」
「キミのいない部屋では静かすぎて集中できない…貸したまえ。半分持とう」

半分とか言いながら全部受け取ろうとする御剣に、ぼくは取り敢えず持っていた袋の半分を手渡した。
「ありがと。結構重かったんだよね、これ。でも、よくここが分かったね」
「以心伝心、だな」

ポーカーフェイスが澄まして応える。まあ、でも一本道だから迷いようはないよね。お前のマンションからここまで。

「行こう――せっかくふたりで居られる時間なのだから、わざわざ離れている必要は無い」

そう言って、御剣が微笑を浮かべてそっと大きな手を差し伸べてくる。たぶん手を繋ぎたいワケじゃなくて、ぼくを自分の隣に誘うために。

青空をバックにぼくに向けられた、優しくて眩しいその笑顔。
その瞬間、ぼくは自分の心がふわり、と浮き立つのを感じた。さっきまでの切なさが消えて、温かいものが流れ込んでくる。

「――以心伝心、だね」

導かれるまま、寄り添うように隣に並びながら、思わずそう呟いたぼくに、御剣が不思議そうに問い掛ける。

「どうしたのだ?」
「ん……なんでもない」

ちいさくかぶりを振るぼくに、御剣が優しく微笑む。
穏やかな声が、成歩堂、とぼくを呼んだ。

「もう少しだけ、遠回りをしてみるか…こうしてキミと並んで歩く時間も悪くはない」
「うん…」

互いの買い物袋の影で隠した指先だけをそっと触れ合わせながら。

多分――少しだけ赤くなってるだろう顔をひとつ叩いて…
ぼくは、大好きな季節を胸いっぱいに吸い込みながら、恋人と一緒に同じ歩調で歩き出した。


End

『…書き始めた数日前は綺麗な五月晴れだったんです…;

もう関東は梅雨入りですねえ…(観測史上2番目に早い梅雨入りって一体(; ̄д ̄)ちょっとだけ何かに負けた気分(笑)


今回、諌凪さまに贈呈させていただくにあたり、「やっぱ甘々じゃなきゃアカン!」と気合が入りましたv』(あやか様より、一部抜粋)

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