逆裁王国パロ

□手紙〜想いの丈を貴方に…〜
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手紙〜想いの丈を貴方に…〜

机に山積みになった、手紙の束。
その束を見て、思わずため息が出た。
「はぁ〜…」
今夜も『待ち望む人からの手紙』が届かなかった。
毎日毎日、国の内政に関わる手紙ならウンザリする位来るのに、『あの人』からの手紙は数える位しかこない…。
大丈夫なのかなぁ…そりゃあ、『あの人』だから、心配無いんだろうけど…
「…はぁ〜…」
「リューイチ王子!」
「うわぁっ!ちょっ、マヨイ王女!ノック位してから入ってくれないかなぁ!?」
悪い事をしていた訳じゃないけど、やっぱり思考が女の子みたいで恥ずかしかったから、つい慌てふためいてしまった。
「あはは、女のコみたいな事言わないの!ため息なんかついちゃって〜…あ、もしかして『また今日も』来なかったんでしょ?勇者様からの手紙。」
「ぐっ…(何で女の子って、こういう事には敏感なんだ…?)」
図星を指されて冷や汗が流れた。
「まあ、リューイチ王子の気持ちはわからなくもないよ。あんなにステキな勇者様だもの…もし私がリューイチ王子の立場だったら、確実に恋しちゃうな…。」
流石の王女でも、やっぱり『あんなシチュエーション』だったら恋するんだ…。
「いやいやいや、べ、別に僕は恋なんて!第一、相手は『同性』だし!」
「強がっちゃって〜、毎日気にしているクセに〜♪」
それはまぁ…気になるのは確かだよな…
…いやいや、待った!
「だから、気になるのは『安否』の方なんだってば!」
「ハイハイ、わかったわかった。そういう事にしてあげるから。」
「わかった事になってないですよ、マヨイ王女!」

   *   *   *

僕は以前、王国に突如襲い掛かったモンスターに戦いを挑み、敗れてしまった。
剣の腕には多少自信があったのに、あっさり敗れてしまった。
揚句の果てには気絶させられ、幽閉された所を勇者様に助けられたのだから、情けないにも程がある…。
僕のプライドはそんなに高くはないつもりだったけど、色々悔しかったのは確かだ。
そんな悔しさを和らげてくれたのは、ほかでもない勇者様だった…。
かなり恥ずかしい所を見られてしまったけど、勇者様は茶化して笑ったりせず、
「貴方は勇敢な方です。自国民の為に剣を振るう王族は今までいなかった…貴方こそ真の国王に相応しい方です、王子。」
と、僕の手を優しく握って励ましてくれたのだ…。

国を挙げて勇者様の歓迎式典を催していた間、勇者様は僕の元へ寄り添っていた。
「魔族は、こういった『幸せの時間』に襲い掛かって来ます…とはいえ、私が側に居れば、魔族も簡単には襲って来ないでしょうけれど。…出来れば、貴方をずっとお護りしたい…。」
勇者様の優しさに、思わず顔が綻んだ。
「お心遣い感謝します、勇者様。」
次の瞬間…勇者様の顔が、何故か急に赤くなった。
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