過去Web拍手

□三代目Web拍手
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静かになった事務所。
見慣れた光景なはずなのに、何故か急に寂しさを感じた。
多分さっきまで賑やかだったのに、突然静かになったからだ。
「牙琉検事…いきなりやってきて、何もしないで帰って…」
そう呟いた時だった。
突然後ろから優しく抱きしめられたから、俺は心からびっくりした。
「何かして欲しかったのかい?」
直接鼓膜に響く、俺より少し低い優しい声音。
「が、牙琉検事!?」
「大事な用があったから、戻ってきたんだ。」
耳にかかった息がくすぐったくて、思わず肩が震えた。
「…感じちゃった?」
「ばっ、馬鹿言わないで離して下さい!」
検事はくすくすと忍び笑いしながらすぐに離れたが、さっきまでの寂しさのせいか、体温が離れていくのが嫌な気がした。
「…オデコ君、何だかカワイイな…まるで雨の日に捨てられた子犬が、抱っこされて温まったのに、また一人ぼっちになって雨にうたれて寒いって泣いてる様な顔して…」
「ど、どんな例えですか!」
しかし…少しだけ図星だった。
成歩堂さんやみぬきちゃんと居ると忘れられるけど、一人になると嫌でも思い知らされる…

俺は『孤独』なのだと。

尊敬していた牙琉先生は、今は塀の向こうだ。
弁護士になって初めて、事務所に誘ってくれたのが先生だったのに…
「うっ…」
突然俺の涙腺が壊れた。
「お、オデコ君!?ご、ごめん…ちょっとからかい過ぎたかな?」
やんわり抱きしめられたが、もう振り払う気が起きなかった。
背中をさする手の温かさに、余計に泣けた。
からかわれて傷ついた訳じゃないという意思表示に首を振ると…
「泣かないで…法介…」
「!」
正面から見つめる牙琉検事の瞳の蒼さと透明さに、一瞬涙が止まった。
そして、牙琉検事に顎をそっと掬われた。
『ふわ…』
触れ合うだけのキスだったが、随分落ち着いた。
「…涙は止まった?」
「はい…大丈夫です。」
泣き腫らしたんだろうな、顔が熱い。
「これ…よかったら聴いて。ガリューウェーブのバラードコレクション。うるさい歌は嫌いだって言ってたからさ…好きになってとは言わないけど、せめて嫌いにはならないで欲しい…特に君にはね。」
いつもの気障っぽい笑顔ではなく、慈しむかの様な優しい笑顔でCDを渡された。
「あ、ありがとうございます。」
「やっぱり君には笑顔が似合うよ。とってもカワイイよ、オデコ君。」
「男にカワイイって、変ですよ。」
俺達は、自然に笑顔になっていた。

CDケースの中に、俺宛のラブレターが入ってると気付いた時、とても幸せな気分になったのは…牙琉検事には内緒だ。
例えバレていたとしても、

もう『孤独じゃない』とわかったから…

End

   *   *   *

初々しい響オドでした。
時間軸は…コンサート前後くらい?(←…)成の野暮用とは、もちろん『あのシステム』の為べす。(本当か?)
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