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□億千万分の一の思い出〜『本物の』ヒーロー編〜
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億千万分の一の思い出
〜『本物の』ヒーロー〜

真宵ちゃんと春美ちゃんが、事務所にあるテレビで『大江戸戦士トノサマン』をわくわくと見ている姿を、何となく眺めていて、漠然と自分の子供の頃を思い出した。
〔そういえば、小さい頃になりたかったのは、正義のヒーロー・ミラクル仮面だったなぁ…〕
コマーシャルになって、お茶のおかわりをしに席を立った真宵ちゃんに、ついでと思い、
「あ、僕もお茶のおかわりお願いしていいかな?」
と、声をかけた。
「うん、いいよ。」
と、返事がきたが、
「いけません、真宵様!お茶でしたら私がいれてきます!どうぞここは、『二人きり』でお待ち下さいませ!」
と、すかさず春美ちゃんから気迫ある声で返され、強引に僕と真宵ちゃんの湯呑を持っていく彼女を見届けた。
「はみちゃんたら…;」
「いつになったら、あの誤解が解けるのやら…;」
僕と真宵ちゃんは同タイミングで溜息をついたが、あまりピッタリだったのが可笑しくて、つい目を合わせてくすくすと笑い合った。
「はみちゃんには勝てないねぇ…」
「本当だね、あんな調子だと誰も勝てないんじゃないかな?」
「あ、でもトノサマンは天下無敵だよ!?」
「いやいやいや、春美ちゃんとトノサマンが闘う訳にいかないだろ;」
危うく、とんでもない方向に話が飛んで行きそうになった。
「まあ!お二方とも、本当に『夫婦』みたいですわ!」
まるで、見合いをセッティングした仲人さんみたいな台詞を春美ちゃんに言われ、思わず僕と真宵ちゃんはずっこけそうになった。
お茶をデスクに置いてもらったところで、ちょうど後半が始まった。
今にして思えば、ミラクル仮面もトノサマンも、特撮物という点では同じ『架空のヒーロー』かもしれない。
でも、あの頃の僕にとっては『本物のヒーロー』だった。


御剣が、学級裁判で僕を弁護してくれたあの時までは…。
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