一般向け小説置場

□たまにはこんな日を…
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新緑が美しい五月初旬。
成歩堂法律事務所は、今日は無人。
調査ではなく、れっきとした公休日だ。

「なるほど君、早く早く!」
「真宵ちゃん、そんなに走らなくても頂上は逃げないよ。」
普段出無精な成歩堂を運動させようと、倉院の里から近い小さな山に、ピクニックのつもりでやってきたのだった。
そして…
「真宵君はいつも元気なのだな…」
「クッ…千尋が持て余していたのも、無理ねぇな…」
…何故か、御剣と神ノ木も一緒に。
「神ノ木のおじ様、千尋様とはこちらに来た事はないのですか?」
神ノ木と手を繋ぎながら歩く少女は、真宵の従姉妹の春美。
「あぁ…そんなヒマなかったぜ…」
「…あ!春美ちゃん、あそこにかわいい花が咲いてるよ?」
神ノ木の雰囲気が沈み出した事を悟った成歩堂は、春美と真宵を偶然見つけた花畑に行く様に促した。
「すみません、神ノ木さん。春美ちゃんが失礼な事を…」
「クッ…細かい気遣いをするコネコちゃん…嫌いじゃないぜ。」
「誰がコネコですかっ。」
じとっとした目で神ノ木を睨んだ。
「む?成歩堂、あちらに変わった樹があるぞ?」
そんな二人のやり取りをスルーしながら、御剣が頂上付近を指して言った。
「あ、あれは【御霊(みたま)の樹】って呼ばれているんです!あの樹に触れながら誰かへの伝言を思い浮かべると、伝えたい相手に思いが届くって言われているんですよ!」
いつの間にこちらに戻っていたのか、花冠を頭に載せた真宵が答えた。
「ふーん…」
興味の薄い反応しか出来ない成歩堂。
「ほぅ…?」
俄かには信じられないといった雰囲気の御剣。
「なかなかロマンチックな話だな…」
意外と乗り気な神ノ木。
三者三様な反応だが、もう少しリアクションを期待していた真宵と春美は、
「あ!信じていないね?!じゃあ、試してみる?」
「そうですわ!さ、さ、なるほど君、真宵様とご一緒に…」
花冠と、二つに分けた後ろ髪をぴょこぴょこ跳ねかせながら二人の手を幹に触れさせた。
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