一般向け小説置場

□真夏の白昼夢
1ページ/2ページ

昔々、ある所にリュー姫という名前の、大変可愛らしい姫がおりました。
「いやいやいや、僕男だから!姫っておかしいでしょ!第一なにこの格好!恥ずかしくて死ねるんだけど!?」
シルクの青いドレスが似合う白い肌、艶やかで美しい真っ黒な髪、ほんのり桜色の口唇は可憐な花弁の様…
「誇大広告な上に僕の文句スルーしちゃったよ、この人!」
リュー姫が可愛くて持て囃される一方、面白くないのは歪みねぇツンデレに定評ありの王妃です。
「ヒゲ!この鞭が唸らない内に、トンガリ頭の愛くる…忌々しい姫をどこか遠くにやっておしまい!」
優雅な扇の代わりに、ビュンビュンと鞭をしならせて王妃が言いました。
「キャィンッ!わ、わかりましたッス!」
鞭が恐くて王妃に逆らえない哀れなおヒゲの男爵は、姫を森に連れていきました。
「早く逃げるッス。王妃はアンタをえらく嫌っているみたいッスから、見つかったら鞭のエジキにされるかもしれないッス。」
「男爵…ありがとうございます。」
逃げた先で、何とも豪華なお菓子の家を見つけたリュー姫は。
「お菓子の家って…ヘンゼ〇とグレーテ〇じゃないか…」
ツッコミをしてもそこはそれ、歩き疲れて空いたお腹を満たそうと、クリームのたっぷり付いたクッキーの屋根の隅っこに手を伸ばして、折り取ろうとしましたが…
「…カタい…」
見た目だけはとても美味しそうなお菓子ですが、どうやら材質は普通の建築材だった様です。
がっかりしながらも、何か食べさせてもらおうと思い、何故か無人だろうと思いつつドアを軽くノックした姫。
「…鍵はかかっていねぇぜ、入りな。」
(あれ?*雪姫のストーリーなら、ここは無人の筈…)
訝しく思いながらドアを開けて中に入ると、妙な和風の部屋(…真宵ちゃんなら喜びそうだな…)に、小さな女の子向けの可愛らしい部屋(春美ちゃんの部屋…かな?)、何故かキチッとした事務所風の部屋(…まさか千尋さんの…?)、そして…これまた何故かモダンな作りの寝室に、薔薇の花弁が散らされたダブルサイズのベッド…そこに居たのは。
「…か…神之木、さん…」
白いバスローブの様な服を着ている神之木さんでした。
「クッ…青いシルクのドレスが眩しいな、愛くるしいお姫様。」
「あの…ここで何を…?」
「可愛らしいコネコちゃんが来るのを待っていたのさ。」
「その格好は何なんですか?」
「警戒心を持たれねぇ用心さ。」
「あの…誰が誰に警戒心を持つと…?」
嫌な予感しかしなくなっても、赤ずき□ばりに質問せずにはいられない性分のリュー姫です。
「それはな…」
神之木さんが答えるか否かの瞬間。

ぐいっ、くるり、ぼふぁっ!

僅か1秒足らずの間に、リュー姫はベッドに押し倒され、神之木さんの下に組み敷かれてしまいました。
「な、何ですかこの態勢は!?」
「クッ…可愛らしいコネコちゃんを喰らう為さ。覚悟しな、リュー姫。優しく頂いてやるぜ…」
「あっ…」
熱い吐息と共に囁く様な重低音を、直接鼓膜に響かせてしまったリュー姫は、それだけで快感を覚えてしまいました。
「か、神之木、さ…あ、ヤっ…」
首筋や耳朶をそろっと舐められ、リュー姫は真っ赤になって震えていました。
「可愛いぜ、リュー…」

「異議あり!」

突然聴こえたのは、法廷の良きライバルにして幼なじみ、そして周囲には秘密の愛しい人の声。
「御、剣…!?」
その姿は、どこから見ても普段の御剣検事ではありませんでした。
寧ろその姿は…

「な、な、な…何でトノサマンみたいな格好なんだよ!」
「む…これは劇場版トノサマン第二作の特別編で登場した、成長したワカサマンの…」
※実際には上映されておりません、フィクションです。
「殿でも若でも、どっちでもいいよ!何でそんな格好なんだよ!僕のピンチを救うヒーローが、そんな格好で良いわけがないだろ!?」
「私の中では、ヒーローとはかくあるべきだ。」
「…こんなの、悪夢だ…」
「リュー姫?」
「成歩堂さん!」
聞き慣れた声に向き直ると、ウサギの耳を生やした王泥喜くんが、目覚まし時計よりどデカい声を上げながら屋敷を出ていく所でした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ