一般向け小説置場

□リップクリーム
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†成歩堂side

「む〜…」
やっぱり、ちょっと痛いかな?
「どうしたの?なるほどくん、御剣検事みたいな唸り方して…」
「いや、最近ちょっと口唇荒れて痛いかな〜って…ほら、少し皮剥けて来ちゃってるし…。」
「本当だ。あ、無理に皮剥いたら余計荒れちゃうから、剥いちゃダメだよ。リップクリーム塗ったら?」
「ん〜…ちょっと恥ずかしいよ、男がリップなんて…」
真宵ちゃんが、少し笑って言った。
「口唇荒れたままの方が恥ずかしいと思うよ。あたしが買って来るから、使ってみようよ。」
「あ…うん。ありがとう…」
無理矢理押しきられた風ではあるけど、心配してくれている真宵ちゃんの好意を無にする訳にもいかないだろう。
程無く、真宵ちゃんは事務所に帰って来た。
「はい、これ。痛いって言ってたから、スースーしない奴にしといたよ。」
口唇に潤いを与えつつ皮剥けをケアする無香料タイプと書かれていた。
これなら男が使っても大丈夫だろう。
「ありがとう。」
真宵ちゃんの然り気無い気遣いに感謝した。
早速使ってみようと、所長室に入って鏡を除き込んで、リップクリームの蓋を外して、いざ口唇に近づけてはみたものの…。
「…やっぱり恥ずかしいな…」
何だか、女の子が初めて口紅を使うみたいな感覚って言うのかな…男だからよくわからないけど。
でも、これで口唇が治るなら…そこまで考えて、急に一昨日の夜の会話を思い出した。

『…成歩堂。君の口唇は少しカタいな…。』
『お、女の子じゃないんだからカタくて当たり前だろ?』

思えば…あれって、荒れた口唇だから気持ち良くなかったって事なのかな…?
じゃあ、もし口唇が治ったら…御剣は『気持ち良い』って思うかな…?
そう考えたら、急に御剣に会いたくなった。

その日の夜、御剣のマンションにお邪魔した僕は、勧めてくれた紅茶を飲みながら、非常に緊張していた。
「君から誘ってくれるとは珍しいな。」
「うん…ちょっとな…。」
うぅ…何て切り出そうか…。
どうしよう…やっぱり、一昨日の事から言わなきゃ、わからないかな…。
「む…?その口唇はどうしたのだ?皮が剥けかかっているではないか。」
「あ…」
先ず僕の口唇を見るなんて、どこまでも恥ずかしい奴…恥ずかしくて死ねるよ、僕は。
「ちょっと、色々忙しくて…あ、でも、リップクリーム塗ったから大丈夫だよ。」
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