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□特効薬
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特効薬

†御剣視点

成歩堂が風邪をひいた。
『夕方調査中に通り雨に打たれた後、夜風にあたったせい』だとか…それしきの事で、よく風邪をひけたものだ。
「君の抗体はどれだけ弱いのだ?」
「う゛…デリケートって言ってくれよ…仕方ないだろ?雨に打たれた後の夜風は、意外に堪えるんだぞ…。」
病人の弱々しい抗議を聞きながら、雨に打たれてトレードマークの髪型さえうなだれ、寒さに震える姿が容易に想像出来た。

…ついでに言えば、濡れた服から透けたであろう身体のラインや、冷たくなった肌のしっとりとした感触までもが…。

そして目の前では、熱で赤らんだ顔、潤んだ瞳、掠れた声、乱れた呼吸の彼…つい『乱された恋人姿』がオーバーラップしてしまう。
「ノド渇いた…水、頼む…」
その一言で現実に引き戻され、言われるままに用意したが。
「…ごめん、だるくて…起きられないや…」
「…そんなに辛いのかね?」
「ん…ちょっと、ね…」
申し訳なさそうに鼻まで布団を被る、可愛い恋人。
「手を貸そう。」
「あ、ありがとう…」
抱き起こしてやろうと背中に触れたが、想像以上の熱さに少し驚いた。
「ふぅ…冷たくておいし…」
ゆっくりと喉仏を上下させながら水を飲む姿は、私の『白い熱情の証』を飲み込む様を見せ付けられた時を思い起こさせるには充分で…。
「…御剣?顔赤いけど、もしかして感染(うつ)ったか?」
「いや、その様なアレでは…」
「だから、どの様なソレなんだよ…ゲホッ!」
体調の如何に拘わらずツッコミを入れる、一種の生真面目さが可愛いのもまた事実だ。
背中を優しく摩ってやると、
「あ、ありが…ゲホッゲホッ!…はぁ、はぁ…苦しいなぁ…」
礼も言い切れない内に、痛々しいまでに激しく咳込んだ。
…そうだ、確か市販だが咳止めに有効な薬があった筈…アレを買ってこよう。
「成歩堂。薬を買いに行くから大人しく寝ていたまえ。」
「ん…」
ゆっくりと身体を横たえさせ、少しでも苦痛を和らげてやりたい一心で薬局に向かった。
あの咳では肺も痛いだろう。
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