一般向け小説置場

□ワインレッド
1ページ/1ページ

ワインレッド
(御成、デートのファッション)
†成歩堂視点

日曜の昼下がり。
休みが重なった御剣と僕は、散歩という名目のデートを楽しむ事になった。

穏やかな気候だって予報にあったから、僕は薄い水色のブイネックセーターにジーンズ、ゆったりしたジャンパーというラフなスタイルにしたけど、御剣ときたら、白のワイシャツに赤いベストとスラックス、おまけにワインレッドのトレンチコート。
仕事着かと思う位にカチッと着こなしているから、
「…この後どこかフォーマルな場所にでも行くのか?」
と尋ねたら。
「いや、君とのささやかなデートを一日中満喫するつもりだが?」
なんて、小さめの声とはいえ、あまりにもストレートかつ恥ずかしい事を言い出すから、いたたまれない気持ちになった。
「何か気に入らなかったか?」
「いや…あんまりきっちりした服装だからさ…似合うけど。」
「褒め言葉として受け取って良いのか?」
「ま…まぁ、ね。」
御剣は昔からオシャレっていうか、かなり服装はキマッていたと記憶している。
あの無駄なヒラヒラフリル(クラ…何だっけ?)もシャツもスーツも、どうやらオーダーメイドらしいし。
狩魔譲りで贅沢なのかと思ったけど、小学生の頃にも『見た目は小学生、中身は高校生な某漫画の名探偵』並の服装だったし。
しかも、キワメツケは20代前半。
何処の貴族だってツッコミたくなる、あの無駄に豪華な服。
検事局の執務室に飾ってあったのを見た時はびっくりしたけど。

…あれ?
そういえば…小学生の時のは覚えていないけど、いつからあんなに『赤』にこだわりを持つ様になったんだ?
普通、男なら赤なんてあまり選ばない色だと思うんだけど。
…まぁ、一時期は僕も着ていたから、あまり『普通』を持ち込む事はないか…思い出すのは痛いけど…。
「あのさ…御剣って赤が好きなのか?」
「嫌いではないが…何だ、突然…?」
「いや…何となく。」
「ふっ…私を君の色に染めたいとでも?」
「ばっ!バカ、何て言い方だよ!」
「半分冗談だったのだが…。」
「ううう…」
じゃあ半分本気かよ…。
「全く…本当にからかい甲斐があるな、君は。」
「へ?」
「そんなに真っ赤になって…」
そう言って御剣が優しく触れたのは、僕の耳から頬。
「っ…!」
御剣のせいで『凄く感じ易い体質』になってしまった僕は、変な声が出そうになったのを必死に堪えた。
肩の揺れ方をよく見たらバレバレなんだろうけど、それはもう不可抗力だ。
「君に合う色は、やはり青系統だろう。赤系統は似合わないが…ワインレッドを纏う私が君に似合えば、それで充分だろう?」
「どっ!何処で覚えて来るんだよ、そんな台詞…!」
「君への想いが言わせるのだ。」
何て言い方だよ、本当に…!
「さて…そろそろ帰るか。」
「え?もう帰るのか?」
まだ歩き始めてから一時間位しか経ってないのに…?

「君と早く二人きりになりたい。」

「っ…!」

柔らかくて優しい笑顔を向けられて、一瞬心臓を鷲掴みされた様な気がした。
卑怯だ、反則だ、狡い…狡いよソレ。
そんな風に言うなら、僕だって…!

「わかったよ。僕だって…御剣と、その…ふ、二人っきりで…い、いちゃついて、みたく、ならなくもないかなぁ、とか思ったりして…」
あぁ、カミまくりだよ、情けないなぁ…。

「なっ!そ、その様なアレは、困る…。」

あれ?
意外に効果覿面?
うわ、御剣が照れてる!?
ちょっとイイかも!
してやったり、て感じかな?
「まさか…君から誘惑されるとはな…」
ゆ、誘惑?!
「正直安心した。君も私と同じ様に想ってくれているのか、たまに不安になる。極度に触れるのを拒まれるから、てっきり心変わりして避けられているのかと」
「そんな訳…!」
無いと言おうとしたら。

ふわり。

掠める様に頬にキスをされた。
「続きは帰ってからだ。」
「な、何だよ続きって…」
キスされた場所を押さえながら、顔がかなり熱いから真っ赤なんだろうな…なんて現実逃避して気持ちの高ぶりをごまかした。

まだまだ昼下がり。
長くて楽しい、甘い一日になりそうだ。


End
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ