一般向け小説置場

□白衣のなるほど君
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リヴァーシア大陸。
いくつかの国が寄り合う狭い大陸。
大きく分けて『軍司国カルマ』『ミツルギ小国』『魔法王国クライン』の三つの国が均衡を保っていたが、それぞれが貫く『正義』は、互いの領土によって見方が異なる為、次第に打ち解け合えなくなってしまった。
『完璧なる正義』をモットーとするカルマ国の王ゴウは、自他共に厳しい人物であったが為に、統率の取れない名も無い小国を『完璧な正義の為』と称して制圧。
それに対抗したのがミツルギ小国。
『罪を裁いて人を憎まない事こそ正義』という信念を貫くシン王は、カルマ国の侵略戦争に便乗した他の小国に襲われ、燃え盛る城に消えてしまった。
唯一の跡取りだった王子・レイジは、国民を救う為に自分の命をかけたがゴウ王にその気高さを認められ、命を救う代わりに後継者にさせられ、悲しみを怨みと怒りにすり替える洗脳を施されてしまった。
一方、カルマ・ミツルギ両国の戦火を魔法で防いでいたクライン王国は、各国の難民を救う為の施設や野戦病院と化しつつあった。
「このまま戦争をしてたら、いつかなにもかも消えてしまう…」
日々増えていく怪我人の手当をしていた看護士ナルティン・ゲールは、意を決して終戦の要請に単身カルマ国へ乗り込んだ。

   *   *   *

「ナルティン・ゲール、君の要求は解らなくもない。だが…私はカルマ帝国を作り上げねばならない。完璧な正義の為に。」
「いいえ、一刻も早く戦争を終わらせて下さい!こうしている間にも、数多くの人が犠牲になっています!その犠牲者を愛していた人達は、自らの身を切られるより辛く悲しい思いをしています!人を苦しめる戦争に、正義などありません!」
「…!!」
「陛下…どうぞ終戦を…!」
ナルティン・ゲールの涙ながらの言葉に衝撃を受けたレイジは、意外な程早くに終戦宣言を発令した。
一人の看護士の一言が、戦争を終わらせたのであった…。

兵士が全て各国に引き上げた頃、ナルティン・ゲールは再びレイジ王に謁見した。
「陛下…ご英断をいただきまして、ありがとうございました。これで悲しむ人は少なくなります…。」
「ナルティン・ゲール。君は数多くの怪我人を癒してきたのだったな…今度は私を癒してはくれまいか…?」
「え…?」
「私は…かつてミツルギ小国の王子だったのだが、戦争で父を亡くしている。その悲しみを怨みと憎しみにすり替え、今は亡きゴウ陛下より戦争を引き継いだのだ…君の一言が私を正気に戻してくれた。だが…君がクラインに帰ってから…私の胸に、大きな穴が空いた様な虚しさが残った。きっと…君でなければ癒やせない。」
「陛下…!」
ナルティン・ゲールは、レイジ王に両手を握られた。
「あぁ…やはり間違っていなかった。君の手を握るだけで、こんなにも安らぐ…こんな気持ちは何年振りだろう…。」
レイジ王の熱意を込めた視線が、ナルティン・ゲールの心を捕えた。
「陛下…。」
「ナルティン・ゲール…レイジと…呼んでくれないだろうか…。」
「えっ!?えっと…れ…レイジ、様…」
「ナルティン・ゲール…!」
感極まったレイジ王は、ナルティン・ゲールを抱きしめた。
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