ホ宝物展示場ホ書庫

□『居心地のいい距離』〜Happy birthday We are〜
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From:成歩堂
Subject:無題

》誕生日会、ずっとできなかったから、近いうちに都合つけてやりたいな。
僕はオードブルを用意するから、ケーキは御剣に任せるよ。
もちろんホールで、おっきいのがいいなぁ。

返信まってるよ


---------End----------

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『居心地のいい距離』
〜Happy birthday
       We are〜

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「これはもう、消した方が良いのではないかね?」

「やだ。折角のバースデーケーキが魅力半減しちゃうよ」

「ム……しかし熱でクリームが緩めば、品質もまた半減になると思うのだが」

「だめ。スイーツ奉行の座は、例え御剣にだって譲るつもり無いからね」

「フ……了解した」


"ロウソクは33本で”―――そんな望みを叶えたバースデーケーキを挟み、私はいま成歩堂と邸宅に居る。

テーブルに並ぶ料理はどれもテイクアウトの品であるものの、成歩堂は嬉しそうに手を伸ばしていた。

当初、ジャンクなものばかり並ぶのでは…と予想していた料理の数々は、どれもが中々味なものばかりである。
それは弁護士であった頃の成歩堂の姿を知るから故か。

それとも、あの頃のようには戻れないという自覚があるからなのだろうか――――


「御剣、また湿っぽいこと考えてる」



「ム…?いや、そんな事は……」

「だってここに、シワ」

「………ム」

「7年越しの誕生会なんだから、今日くらい楽しくやろうよ」


己の眉間をコツコツと叩き、キャンドル越しに小首を傾げて微笑まれてしまっては、そのような思考も完全降伏する以外にない。
返答代わりにクーラーからワインボトルを手向けると、成歩堂は嬉しそうにグラスを差し出した。

スイートワインとバースデーケーキの甘い芳香に包まれ、共に過ごした季節の記憶を思い起こせば、自ずと眉間から力が抜けてゆく。

人への想いとは、実に偉大な感情であるなどと思いつつ、成歩堂が手向けたワインボトルに手元のグラスを差し出したのだった。
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