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□八代目Web拍手
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聖しこの夜(ミツナル)

「もうクリスマスかぁ…」
この時期になると思い出すのは…。
「やっぱり…辛かっただろうな、御剣…」
御剣が実父を亡くした事件を、時効寸前で解決するきっかけになった『あの事件』。

「君のおかげで、私は過去を精算出来た…それなのに、私はあの時君を手酷く傷つけてしまった。申し訳なかった…」

いつだったかそう言われたけど…いくら僕に『父親を殺した』(と思い込まされた)過去をさらけ出したくなかったとは言え、あからさまに『私に関わるな』と言われたり、散々冷たくされたりしたのには、正直参ったな。

   *   *   *

「…口に合わなかったか?」
食の進まない僕に、御剣が見当違いの心配をした。
せっかく御剣が、クリスマスプレゼントにと高級レストランのディナーに誘ってくれたのに、肝心の僕があまり暗い事考えたらダメだよな。
「あ、いや、ごめん。ちょっと考え事してて…美味しいよ、とても!」
確かに目新しい料理ばかりだけど、流石日本人の舌に合わせて作られた物。
真宵ちゃんじゃないけど、これならいくらでも入りそうだ。
「考え事?何か悩み事か?」
「いや。ちょっとね…」
「まさか…あの事件か…?そういえば、丁度今時分だったな…私の失踪も…」
驚いた…まるで心を読まれたみたいだ。
「ご、ごめん!蒸し返すつもりじゃ…」
「大丈夫だ…君は私を救ってくれたのだから悩む事は無い。それに…」
「…それに…何?」
絵になりそうな優雅さでワイングラスを揺らめかせながら、少し何かを考えていた様子だった。
「…いや、ここを出てから話そう。」
「勿体振るなぁ。」

   *   *   *

「とても美味しかったよ。連れていってくれて、ありがとうな。」
意外にボリュームのあったディナーだったから、腹ごなしと酔い醒ましに公園まで歩いた。
「君は、真宵君並に幸せそうに食べるから誘った甲斐がある。」
「あはは、確かに真宵ちゃんは食べる時幸せそうだけど、僕も同じ様にしていた?全然気がつかなかったよ。」
夜風が無いから、あまり寒く感じない。
でも、すごく星が綺麗だなぁ…。
月も早くに西の彼方へ沈んだせいか適度に暗く、広い公園から見ているせいか空も広い。
「何かさ、こんなに綺麗な星空を見られるなら、冬も悪くないよな。」
寒いのは嫌だけど、と付け加えたら、『確かに』と少しだけ笑われた。
「そうだ。さっき『君が悩む事は無い』の後に、『それに…』って言ってたけど、続きを聞かせてくれないか?」
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