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□二代目Web拍手
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†牙琉霧人サイド

『奇跡を起こす逆転で有名な、あの新進気鋭の若手弁護士・成歩堂龍一、証拠品捏造の疑い!』
『浅ましき、勝訴への執念!無敗の経歴を死守したいが為の行為か!?』

…様々な新聞記事のスクラップを見て、私は優越感を味わっていた。
私の傍聴している前で、あまりに稚拙な弁護をするあの男…成歩堂龍一が、遂に世間から見放されたのだ!
許せなかった…あんなに稚拙な弁護士が無敗を誇っていた事が!
あの男を、完膚無き迄に叩き潰してやるには、一体どうすれば効果的か…私は、いつもそればかり考えていた。
しかし、それは案外簡単な事だった。
ある時ふと気がついたのだ、彼は『依存体質』だと…!
「あの時御剣が言っていたけど…」
「神ノ木さんに言われてから、僕も同じ様に思えて…」
他にも、誰かしらに言われて共感したり、小さな事にもすぐうなづいたり、まるで自分の個性を感じさせなかった。
ならば話は早い…私に依存する様に仕向けてやれば良いのだ。

「成歩堂…私は、貴方が好きです…。」
ある日、私のマンションに成歩堂を呼び、自ら用意した酒の席で、そう話してみた。
もちろん、成歩堂は酩酊に近い状態にしてからであり、私が彼に対して持つ思いは『憎しみ』でしかない。
「牙琉…ごめん、僕は…好きな人がいるんだ…だから、君の気持ちには答えられない…」
ふっ…予想通りの展開だ…。
「ならば…せめて貴方が泣きたい時に、側にいて差し上げたい…二人きりの時は、私の胸で泣いても良いのですよ…。」
肩をそっと抱き寄せてやれば、涙腺の弱い彼は、呆気なく陥落した。
「牙…琉…っ!」
私の胸に縋り付いて泣き始めた。
駄目押しで、耳元に囁いてやった。
「成歩堂…私は貴方を一人にはしませんから…」
すると、遂に声を上げて泣いた。
「うわぁあ−−−…っ!」
私は、優越感に心酔した。
成歩堂が私に縋り付き、みっともない姿を曝している…これ以上は、今は望むまい。
これから少しずつ、じっくりといたぶってやるのだ…!

   *   *   *

†成歩堂サイド

御剣…ごめん。
君が遠くに行ったからと言って、決して牙琉に心変わりした訳じゃないんだ…!
ただ…君の体温が感じられなくて寂しかった時に、あんな風に優しくされたから…つい縋ってしまったんだ…。

でも、気がついたんだ。
牙琉は、僕の事を本当は好きじゃないんだって…
だって、御剣が僕と居る時にしてくれた事を、牙琉は全くやろうとしなかったから…

例えば、一緒にカードゲーム(特にポーカー)をやろうとしても参加しなかったり、真宵ちゃんや春美ちゃんの誕生会や、千尋さんのお墓参りに一緒に来てくれなかったり、揚句僕の誕生日に本格フランス料理店に連れていって、マナーをよく知らない僕をからかったり…
とにかく、最初は小セコい嫌がらせをしてばかりだったんだ。

そして…秘密裏に調査をしていく内に、牙琉が仕組んだ罠だったと知り、僕は憤慨した。
…身体を明け渡してはいなかったから良かったものの、もし御剣への想い以外全てを掠われてしまっていたら…と思うと、ぞっとする。
あんな冷徹な裏切り者に、一度でも泣いて縋った自分が堪らなく嫌になった…。

君を裏切った僕を、許さないで欲しいと思いながら、それでも君を諦められない浅ましい僕は…

[イゾンショウ・ノ・ウラギリモノ]…

   *   *   *

歪んでる霧さんが怖いべす。
初めてオドロキ君に語りかけた時の、あの爽やかそうな笑顔が、実は悪魔の微笑だったとは…!
そして、成歩堂サイドは少し時間軸が進んでおります…

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