貢ぎ物

□花言葉を君に
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花言葉を君に

「成歩堂君、見て見て!」
買い物から帰って来た真宵ちゃんが、黄色い薔薇の小さな花束を持っていた。
「…綺麗な花束だね。どうしたの?」
まさか、綺麗だから思わず買ったけど、経費で落として欲しいとか言わないだろうな…なんて考えていたら、
「御剣検事から渡されたの。『成歩堂には別の花を贈るから、君に受け取ってもらいたい』なんて言っていたよ。」
確かに成歩堂君は薔薇ってイメージじゃないけどね、なんて言われたのは想定内だから構わないけど、何で真宵ちゃんに薔薇を贈ったりなんかするんだよ…。
しかも、いかにも付け足しみたいに『後でお前にも贈ってやるから怒るなよ?』みたいな言い方して…。

何だかちょっとムカついた…。

   *   *   *

資料を借りようと思い、検察庁に向かうと…
「成歩堂龍一!」
【ブンッ、ピシィッ!】
「いってぇっ!こ…この声(と鞭の風切り音)は…」
「久しぶりね。」
「…(やっぱり)狩魔冥…」
涼しげな色の髪をさらっと風になびかせ、いつもの自信に満ちた表情で立っていた。
「いつ帰国していたんだい?」
「昨日よ。ちょっとしたバカンスでね。」
…わざわざ僕を鞭でシバく為にか?
「さっきの鞭は、ほんの挨拶代わりよ。ついでにこれも受け取りなさい。」
居丈高に渡されたのは、かすみ草が沢山あり、中央に薔薇が一輪入った、シンプルだけど綺麗な花束だった。
「あ…ありがとう。」
「…レイジが、綾里真宵に薔薇を贈ったと言っていたわ。」
「そうなんだよ…って、何で君まで僕に薔薇を?それも真紅の…?」
「!あっ…き、帰国の挨拶ついでと言ったでしょうっ!?」
【ビシィッ!】
「いたたたたっ!ごめんなさい、ごめんなさい!」
何もシバかなくても…あ〜痛かった…。
「…本当に綺麗だね。」
「…え…?」
驚いた様な顔で、僕に視線を向けた。
「ほら、かすみ草の白と緑の中に、一輪だけ真っ赤な薔薇って凄く良」
【ビシィッ!!】
「いってぇ!な、何で急に!?」
「そんな事…わかりきっていたわ!」
【ビシィッ、ビシィッ、ピシャッ、バシンッ!】
「い゙だだだだ〜っ!」
何故か急にご機嫌ナナメの狩魔冥に、散々シバかれてしまった。
危うく、せっかくもらった花束がめちゃくちゃになる所だった…。
狩魔冥の行動パターンは、相変わらずよくわからない…。
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