貢ぎ物

□勝利の行方
1ページ/7ページ

「御剣検事、今日も鮮やかな手腕だったッス!」
「む…」
法廷での審議を終えて控室に戻ってみると、糸鋸刑事が待っていた。
「まぁ、今回は初めからクロと解りきってる相手だったからな。むしろ、私が出る程の内容でも無かっただろう。」
証拠も揃っており、何より隠し防犯カメラで一部始終を録画されていたのだから、間違う方がおかしい。
「それなんスけど…始めはゴドー検事が担当する筈だったッス…それが…」
なるほど…葉桜院の一件で、担当を外されたのか…。
「…なるほど君と知り合いの女の子達のおかげで、執行猶予付きの禁固刑で済んだッスから、『今は』大人しいッスよね。」
…何やら引っかかる物言いだ。
「私が検事局にいない間に、何かやらかしたのか?彼は…」
問い質すと、糸鋸刑事は少しうなだれながら言った。
「…疾風の様に現れて、よく分からない例え話をしながら、何処から出すのか、コーヒーをがぶ飲みして、たまに【奢る】と称して人にコーヒーをぶっかけ、疾風の様に去っていく毎日だったッス…おかげで、スーツやコートにコーヒーの香りやシミがついたり、火傷したりして…クリーニング代もバカにならなかったッス…」
…一体何が哀しくて、糸鋸刑事の愚痴を聞く羽目に…。
しかも、最近成歩堂の事務所に入り浸っているという、ゴドー検事こと『神ノ木荘龍』の話題…面白くない事この上無い。
眉間に縦皺が寄って行くのが分かった。
「こ、怖い顔して、どうしたんスか!?;」
「む…すまない、少々考え事だ。」
「あ、そう言えば!成歩堂弁護士で思い出したんスけど、今度の日曜に真宵君達を連れて『温泉旅行』に行くらしいんスよ。何でも、商店街の福引きで当てたらしいッス。御剣検事の分もチケットがあるそうッスよ。」
「何だと?」
何故直接私に会って渡さなかったのだろう…?
しかし…これは何たる事態だ…!
よもや、成歩堂から温泉旅行に誘われるとは…!

この時の私は、天にも昇る気持ちだった。
成歩堂はまだ、私を必要としてくれていたのだと…。

ある意味、私が必要だというのは間違ってはいなかったが、別の意味では間違っていた事を、実際に待ち合わせた後になって知る事になろうとは…思っていなかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ