貢ぎ物

□Which Do You Like?
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土曜日の夜。
御剣の住んでいるマンションのリビングで、成歩堂が適当に借りて来た洋画(アクション・アドベンチャー物)のDVDを観ながら、二人ソファーに並んで軽く酒を呑んでいた。
「成歩堂…」
エンディングに差し掛かった時、不意に御剣から穏やかなバリトンで囁かれた。
そっと肩を抱かれ、思わず身体に力が入った。
「みつ…」
驚きに瞳を丸くさせたが、長く整った睫毛が伏せられたのを見ると、自分も静かに目を閉じ、御剣の口唇を待ち受けた。

御剣のキスは、例えるなら《羽毛で触れる様な、優しくふんわりとした感触》だ。
まるで、華奢なガラスを扱う様に…
しかし、成歩堂は御剣の体温を感じながらも、
〔…やっぱり、あの人とは違う…でも…御剣のって、優しくて気持ち良いんだよなぁ…〕
等と不謹慎な感想を抱いてしまった。

何故御剣という《恋人》がいながら比較する対象がいるかと言うと、昨日御剣以外の人物からキスをされたのだ。
それも、相手は自分を(何故か)怨んでいると公言している、自称《完全無敗、伝説の検事》(しかし成歩堂から言わせてもらえば、『無類のコーヒー好きな、謎の仮面検事』だが…)こと、ゴドーからである…。


金曜日、地方裁判所弁護側控室での出来事。
「邪魔するぜ…」
「ご、ゴドー検事!」
ドアをノックもせずに突然入って来たのは、かの仮面検事だった。
「…今日も勝ったな、まるほどうさんよぉ…」
「…弁護に勝ち負けは無いと思いますが?」
「クッ…あのヒラヒラのボーヤは、そうは思わなかっただろうぜ…」
「な、何ですかソレ、貴方は御剣の事を…」
「知ってても不思議は無いだろう、俺は検事だぜ?」
「あ…」
うっかりしていた…そう思ったが…
「だが、あのボーヤならデビューしたばかりの時から知ってたぜ」
「えっ!?」
何故そんな事を…?
口には出さなかったが、疑問が頭の中を渦巻いた。
「まあ、アンタに語る義理はねえがな…」
随分と含みのある言い方に、少なからずカチンときた。
「…貴方は御剣の何を知っているのですか?」
「知りてえか?まるほどう…」
いつもの軽薄でニヒルな笑みを口元に浮かべるゴドーに、少々の警戒心は働いたが、自分も知らない御剣を知っているという目の前の男に、全てを白状してもらいたくなった。
「…教えて下さい。」
そう言った途端…世界が急に回転した。
「うわっ?!」
そして、背中に衝撃を受けた。
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