一般向け小説置場

□「逆転裁判カップリングで20のお題」
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MISS YOU(みぬきちゃん)

今夜、オドロキさんは王子様と一緒。
バラードコンサートのライブツアー初日は近くでやるからと、パパとオドロキさんとみぬき、三人分のチケットを送ってもらったのに、みぬきもパパも仕事の都合でどうしても行けないから、ライブのビデオを絶対貰ってきてくれる様にお願いした。
「新曲のCDも、サイン入りでお付けしましょうか?」
と、王子様が嬉しいお話までしてくれたから、
「ぜひお願いします!」
なんて、言っちゃった。
これは、お仕事にも自然力が入るってモンですよ!

   *   *   *

張り切って挑んだ今回は、新作のマジックも大成功!
いつもより多めのギャラをもらって、
「これでうちの事務所も安泰!」
なんて、すっかり舞い上がっちゃった。

事務所に着いたら鍵が開いていたから、元気よく事務所のドアを開けた。
「ただいま、パパ!今日ね、みぬきの新作マジック大成功だったんだよ!」
…返事がなかった。
「…オドロキさん、居るんですか?」
試しに、奥のオドロキさんの仕事場も見たけど…
「…誰もいない…」
パパったら…また鍵かけ忘れたんだ…
どうせ盗まれる様な物は無いし、鍵のかけ忘れも珍しくはないけど、無人の事務所って…ショーの終わったステージみたい…

ショーの間は楽しいけど、後片付けしてる時や、何もなくなったステージに立つのは嫌い。

だって…
永遠に一人ぼっちになった気がして…。

貧乏でも幸せそうな人達は、周りに誰かがいてくれるから。
金持ちでも不幸な人は、誰も側にいないから。

誰かがそんな事を言っていたけど、本当にそう思う。
パパやオドロキさんは、いつも誰かが側にいるのに、みぬきは…本当に側に居て欲しい時に、誰もいない…!
「…っ!」
急に悲しくなって握りしめた封筒には、いつもより多めのギャラ。
「…こんなものがあっても…みぬき全然嬉しくないよ!」
封筒を床に叩きつけた。

こんな夜中に、どうせパパもオドロキさんも事務所には戻って来ない…
そう思って、衣装が濡れるのも構わずに、
今までにない位、
激しく

泣いてしまった…

   *   *   *

…気が付くと、朝だった。
頭が重くて、目が痛かった。
衣装もひどい状態だった。
「ん…?」
毛布…?
『−−−!』
…この声は、オドロキさん!

鏡をみたら、いかにも『夕べ泣きすぎました』っていう感じのひどい顔で、思わず笑っちゃった。
洗って冷やしたら、少し腫れがひいたみたい。
ドアを元気よく開けて言った。
「おはようございます、オドロキさん!」
「あ、おはよう…って、どうしたの?その目…」
「…昨日、ちょっと悲しい事があったんです。でも、もう大丈夫です!」
どうせ嘘ついてもダメなんだから、正確じゃないけど正直に答えた。
「…ところで、例のブツはどうした?」
おどける様に言ったら、
「…こちらでごぜーやす、ボス。」
なんて、ノリ良く返してくれて、紙袋を出した。
「わあ、ありがとうございます、オドロキさん!そうだ、一緒に見て下さいよ!」
一緒に、を強調して腕を引っ張ったら、
「おっとと、危ないよ、みぬきちゃん。」
と言いつつ、笑って付き合ってくれた。

…ありがとう、オドロキさん。
昨日の『一人ぼっち』発言、取り消します。



End

※みぬきちゃんの強さの裏には、きっと淋しさや悲しさが詰まっていると思いまして…春美ちゃんは、まだここまで考えるには早いんじゃないかと…
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