一般向け小説置場

□「キス」で求める10のお題
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『離れたくない…もう少しこのまま…』

口唇を触れ合わせるだけの、随分可愛らしい…だが、『好きだ』という気持ちを一心に込めた、精一杯のキスだった。

ゴロゴロゴロ…!!

「っ……!」
雷の音が聞こえたが、成歩堂は少し肩に力が篭っただけで、私から離れたりしようとはしなかった。

短い様な、とても長い様な時間の後、私は漸く口唇を離した。

「…成歩堂…私は…君が、好き、だ…」

不躾なまでに真っ直ぐ見つめた割に、あまりにもつっかえながらの告白が情けない。

耳まで真っ赤になって俯く成歩堂が、可愛らしくて堪らなかった。

「御剣…僕も、御剣の事…好き…」

小さく呟いて、成歩堂は俯いていた顔を上げた。
その表情は、可愛らしくはにかんだ、太陽の様な明るい笑顔だった。

   *   *   *

「おはよう。」
思い出に浸っている内に、成歩堂が起きて来た。
「む、随分早起きだな。つい先程梅雨明け間近と言われたが、まだまだ雨は降りそうだ。」
「失礼な。」
軽い冗談を言い、紅茶を勧めた。
「アーリーモーニングティーだ。君の為にいれた。」
「お、ありがとう。…やっぱり、御剣のいれる紅茶は美味しいなぁ…今回はちょっと濃い目だけど。」
「アーリーモーニングティーは起きぬけに飲むのだよ。本当はベッドにいる間に飲んで、身体を温めて目覚ましにする為、少々水色が濃い。」
「すいしょく?」
「紅茶の色合いだ。抽出時間の違いもあるが…」
「…ごめん、蘊蓄はいいや。」
苦笑しながら遮った成歩堂の、意外に柔らかい手を取った。
「成歩堂。」
「ん…?」
紅茶で温まったせいか、少し頬を赤らめる可愛い恋人。
「私は常に、君にとって一番良い相手でありたい。」
「ど、どうしたんだよ急に…」
恭しくひざまづいて手に口付けると、
「それじゃあまるで、『姫と王子』みたいだよ。」
と笑われた。
「大切な君には丁度良い扱いだろう?」
「あのなぁ、僕はお姫様みたいに何も出来ないで守られているだけじゃ嫌なんだ。」
笑いながら立ち上がって、成歩堂を抱きしめた。
大人しく抱きしめられるがままの、愛しい存在。
「雷が恐くて、涙ぐんで震えながら私に抱き着いていた子供は、今や立派な…いや、子供の様に抱き着いてくるのは、今も変わらないか。立派と言えるかどうかも怪しいしな。」
「しっ、失礼だぞ!いつの話だっ!てぇか今抱き着いているのはどっちだ!」
もぞもぞと抵抗をしていたが、私がしっかりホールドしてやると諦めたのか、再び大人しく腕の中に収まった。
「…そういえばあの時、雷が恐くなかったかもしれないな…。」
「む?」
「あの時…雷が恐くて御剣に飛び付いただろ?…御剣が、精一杯な告白とキスをしてくれたから…凄く安心したんだ…。」
そう言って見せたのは優しい笑顔…。
「ふ…ならば、不安がる度に君にキスをして安心させてやるとしようかね?」
と、わざと成歩堂が快感に震える様な声で囁いてやった。
「んなっ!ばっ、バカ言うなよ、恥ずかしいじゃないか!」
真っ赤な顔で拒否しても逆効果だ。
「では…たまには君から、恋人同士特有の甘いキスをしてはくれまいか?」
「あはは、言い方がキザだなぁ…でも、いいよ。」
と笑って、そっと私の背に腕を廻すと、

「御剣…大好きだよ…」

そう呟いて、朝日に黒髪を輝かせながら、柔らかく甘いキスをくれた。


End


*今回の御ったんは、『格好つけてる割にヘタレ乙女な御っ子たん』と、『キスをねだる甘えん坊な大人』べすなぁ。
(笑)
多分御っ子たんは、最初から子なるに恋していたのでは…?
(※御っ子たん=子供時代の御ったん)
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