ぷよ小説

□ハートハンター
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最近、ふと周りを見渡せばあの暗緑色の尖んがり帽子を毎日見かけることにシグは気が付いた。

それはまるで、例えるなら空気。いつの間にかシグのいる空間に入り込んでいて、猛烈な自己主張を全身全霊を使って繰り出してくる。

一体何がしたいのやら。レムレスからの激し過ぎる求愛行動を理解するには幼く、恋愛に無頓着なシグにはまだ早いようだった。

しかし、それにもめげずに頑張るレムレスの姿が今日もあった。







「シグくぅん、そろそろ…僕の気持ちに応えてくれてもいいんじゃないかい?」

「うーん…。…なにが?」

「いつもそうやってはぐらかすんだから…。僕、もう待てないんだよ。」


昼下がりの公園で虫を探していたシグは箒に跨がってやってきたレムレスに捕獲され、膝の上に抱きかかえられて耳元で愛の囁きを強引に聞かされていた。

だが、恋愛一つしたことのないシグにどれだけ言葉で愛を伝えても中々受け入れてはもらえない。

ならばと考え付いたのが、シグの初恋の相手を自分に…という、なんとも欲望丸出しの計画。


「レムレス、今日のお仕事はおわったの?」

「僕は完璧主義だから、もちろん終わらせてきたよ。シグ君に早く会いたかったからね…。」

「へー…、そうなんだ。」



この通り。どれだけ好意を前面に出しても恋愛経験がないシグにはまだまだ伝わらない。

膝の上に大人しく座っている様子を見ると嫌われてはいないことはわかるのだが…。

愛しいシグに新作の美味しいキャンディーを差し出せば素直にそれを受け取って食べてくれる。

だが、もう良い年頃を迎えているレムレスが相手となるとそんな清い関係が長く続くわけがない。

もう、どれだけの夜をベッドの上で一人寂しくシグを妄想して抜いたことか。


「…ねぇシグ君、きみが好きなんだ。キスして良い…?」


たぎる想いを抑えることが出来ずに力を緩めてシグを優しくぎゅうっと抱きしめる。しかし、返ってきた返事は…

「むぅ。…だめ。」


それだけ言うとシグは瞼を閉じてぷいっとそっぽを向いてしまった。

予想通りの答えに内心でガクッとうなだれるレムレス。砂漠で運命の出会いを果たしてから一ヶ月、レムレスは毎日欠かさずシグに会いに行っては、紳士な求愛行動を続けてきたのだが、やはりシグは男。

女子相手に学んできた上品な戦法は全く通用しないらしい。

ここで一度、戦法をがらっと変えてみた方が良いかもしれない…。

こうなれば善は急げだ。早速、作戦を練るために家へ帰ることにする。

膝の上からシグを降ろすのは物凄くもったいない気がするが、…仕方がない。


「シグ君、僕ちょっと用事を思い出しちゃったから、家に帰らなきゃ。」

「…お仕事おわったんじゃなかったの…?」

「うん…。ごめんね。」

「ふーん。…じゃあ、ばいばいレムレス。」



冷た過ぎるほどすんなりとレムレスから離れたシグは公園の出口まで駆け出していき、レムレスに振り返って手を振るとそのまま森のある方向へと走っていってしまった。

夕方、公園のベンチに一人残されたレムレス。今公園には彼しかいないことは好都合だった。作戦を練る際に必ず面に出てしまうデレた表情は見られたくない…。

それに家に帰りたいというわけでもないし、せっかくなのでこの静かな公園で計画を立てることにした。









そして一時間後…



「…よし、完璧。これでシグ君の心は僕が奪ったも同然っ!」

あれからうんうんと悩み、木の棒で思い浮かんだシグ対策を地面に書き上げてその中から厳選し、選び抜いた結果を明日、早速実行に移すことにした。
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