ぷよ小説

□赤頭巾さん
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ある町から少し離れた某森の外れに小さな家がありました。そしてその小さお家にはクルークという、それはそれは無愛想で、いつも偉そうな態度を崩さない男の子と藤色の髪が美しいアコールお母さんがゆったりとした毎日を過ごしていました。


ある日の事、クルークは優しいお母さんにお使いを頼まれました。

それは、家から少し離れた所に住んでいるすこし変わったお婆さんへのお見舞いです。

「それじゃあ、クルークさん。少し遠いけれど、お婆さんのお見舞いに行って来てくれるかしら?」

「…はいはい。」

「あと、森にはお腹を空かせたオオカミがいるから充分注意してくださいね?。」

それならば、魔導が得意なアコールお母さんがお婆さんのお見舞いに行くべきなのでは?と、クルークは心の中で冷静に突っ込みますがそうも言っていられないのです。お母さんは毎日忙しく家事を切り盛りしているのでお婆さんのお見舞いに行けるような時間がとても作れなかったのです。

「それにクルークさん最近勉強ばかりしてるし…運動不足でしょ?メタボになるわよ。」と毒を含んだ爽やかな笑顔で付け足されればクルークはお母さんのお使いを渋々と、いえ、喜んで引き受けるしか道はありませんでした。

そしていよいよお使いに行く時間になり、クルークは健気にもお母さんに小さく手を振り、渡されたバスケットを手に村から出発しました。

「…まあ、オオカミなんて出て来ても僕の魔法で一捻りだけどね。」

うひゃひゃと独特の笑い声をあげるクルークですが声は少し震えています。脚を止めずに進んで行くと、杭で打たれた大きな看板がありました。

看板には“この先オオカミ注意”と、書いてあります。

看板を読んだクルークはこめかみから一筋の汗を流し、ふんと鼻で笑うとめんどくさいお使いを早く終わらせてしまおうと大きく一歩踏み出した、その時でした。

「…ねえ、そこの…、」

看板の裏からひょこっと子供が現れ、クルークに話し掛けてきたのです。

(…なんだよ…)


クルークは面倒臭そうに立ち止まりその人物の方向へとゆっくり身体を向け、視線を子供に向けるとクルークは瞼を見開き少し驚いてしまいました。

なぜならその子供の頭にはなんと、犬のような大きな耳が生えていて、お尻には太い尻尾のような物がフサフサと動めいているのを見てしまったからです。

(まさか、これがオオカミ…?)

いつの間にか口の中に溜まった唾をゴクリと飲み込み、髪の先から足の指の爪の先までゆっくりオオカミを見つめますが…、

(凄く、可愛いんだけどっ…!)



オオカミとはおもえない端正な顔立ち、美しい水色の髪、魅力的なオッドアイそして何より身に纏っている短めなもこもこベストと短すぎるショートパンツ、爪のついたアームウォーマーにもこもこブーツ…。惜し気もなく露出している白い素肌。

瞬間、心臓の動きが激しくなり胸に熱い何かが込み上げてくるような何とも言えない感覚を覚えました。

「…脈拍っ。」

実は健康オタクだったクルーク。右の手首に人差し指と中指を押さえ付け、急いで脈拍を計ります。

一方、放置されてしまったオオカミは自分の姿を見せても血走った眼で凝視しし続け逃げ出す様子がないクルークに、むっ…と苛立ちを覚え鋭い爪が生えたもこもこの細い腕を振り上げ、

「ぼくはオオカミなんだぞー…。…怖いでしょ…?」

オオカミである事に自信を無くしてしまったのかそんな可愛いらしい態度にクルークは顔の筋肉が益々だらし無く緩んでいってしまっている事に気付き、慌てて片手でさっと口元を隠します。あと目元の筋肉も緩んでしまっているようです。

「本当だ、恐い。けど可愛…カッコ良いオオカミだね。」

クルークは必死に顔中の筋肉を引き締めてなんとかオオカミを褒めてあげました。

するとオオカミの機嫌はみるみる良くなり、振り上げていた腕を下ろし、契れそうなくらいの勢いで尻尾を左右にびゅんびゅんと振りだしました。嬉しくて堪らないのでしょう。

「…めがね、どこかへお出かけ?」

「(…眼鏡…)えっ…、あぁ、この先にあるお婆さんの家へ行くのさ。めんどくさいけどね、お見舞い。」

「!……そっか。しめしめ。」

(しめしめっ、て…!)

思わず鼻から血が飛び出そうになりました。

クルークがそんなお使いの途中だと知るとお腹を空かせたオオカミはしめしめといいことを思いつきました。

そのしめしめとは、病気で弱っているお婆さんの家へ先回りしお婆さんを食べてベッドの中へ入り、そして何も知らず家の中へ入って来たクルークに病気のお婆さんを演じ、油断させてぱくり、という一度で二度美味しい、いいことでした。

「ねぇ、めがね。あそこのお花畑でお花をつんで行きなよ。きっとおばあさんも喜ぶよ。」

「…うーん。確かにそうかもね…。」

“あの人変態ナルシストだし…”と余計な事まで付け足すと早速オオカミに案内されてお花畑へと向かいました。

「へえ、なかなか良い場所だね…。」

野原一面に咲き誇る花に心を奪われます。花畑の中心へ進んで行くとクルークは変態お婆さんが好きそうな花を選びながら摘み取り始めました。

そんなクルークの様子を側で観察していた筈のオオカミはニヤリと微笑み(怖くない可愛い)いつの間にか姿を消していました。

そして数分後……

「…そうだ。君さ、名前はなんていうの?」

花を摘み終えたクルークはオオカミにお礼と名前を尋ねようと立ち上がり辺りを見回しますがオオカミの姿はどこにも見当たりません。

「なんだよ、お礼を言おうと思ったのに…。」

もう森に帰ったのだろうと思ったクルークはお婆さんの家がある方向へ戻り、今度は寂しく鼓動を繰り返す胸を押さえ、また歩き出しました。

森をこえ、川をこえ。
そしてやっとお婆さんの家の前までたどり着くことが出来ました。

「勝手に上がるよ、レムレス。」

呼び鈴も鳴らさずドアノブへと手を掛け、お婆さんの家へお邪魔したクルークはお婆さんが横になっている筈のベッドへと向かいました。

すると……、

「いらっしゃい、よく来たねクルーク。でも今ちょっと取り込み中なんだ…。」

「なっ、ななな何してるのさっ…!?」

なんとベッドにはついさっきまで一緒に居たオオカミをお婆さんが馬乗りのかたちで組み敷いていたのです。

どうやらオオカミはお婆さんを食べようとして襲いかかり逆に返り討ちにあってしまったようです。これにはクルークも驚きです。

「…め、めがねのうそつき…。おばあさん、すごく元気…」

「病気は物語りの設定上だからっ!」

本当は元気なんだよ、とお婆さんがオオカミに囁くとオオカミは両耳をぺたりと下げてうなだれてしまいました。

「それにしても、僕を食べようとするなんて悪い子だねぇ。…そんな悪い子にはお仕置きが必要だね。」

「……??」

ニッコリと天使のように微笑み、恐ろしいセリフを呟くレムレスお婆さんですが、幼いオオカミは意味が理解できていない様子で首を傾げています。

それもそのはず、肉食であるオオカミがお婆さんを食べようとした事は当たり前の事なのですから。

「…あぁ。そういえば僕、ちょうどペットが欲しかったところなんだ。君は運がいいね。夜のお仕事を頑張ってもらうだけで三食昼寝、散歩付きでどうかな?」

「……おやつは…?」

「僕の手作りで良ければ食べ放題だけど。…どうする?可愛いオオカミさん…。」

そう言うとお婆さんはいやらしい手つきで小さなオオカミの顎に長い指を這わせました。

「……あのさ、一つ質問があるんだけど…。」

「なんだ、居たのクルーク?」

「ずっと居るよ!?…まさか夜の仕事って…。」

「わざわざ説明しなくても解るだろう?寝る前にするやらしい運動だよ。」
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