ぷよ小説
□乙女週間
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「ちょっと、そこのあ、な、た。止まりなさい。」
「…フェーリ…?」
学校からの帰り道。背後からいきなり声を掛けられた。その聞き覚えのある声に素直に従い家へと帰る為に動かしていた足を止めて振り返る。
するとそこには腕を組み、仁王立ちしているフェーリがいた。表情はどこか楽しそうに見えて、口端を吊り上げてフフンと笑っている。…悪い事を考えている時の彼女の笑い方だった(でもきっと彼女にしては良い事、楽しい事だ)。
隣町からわざわざプリンプにやって来てまで一体シグに何の用があるというのだろう?失礼だが怪しいとしか思えない。
「ぼくに何か用事?」
「そう。貴方にとっても大事な用があるのよ。聞いてくれるかしら…?」
もうこの時点でフェーリの周囲からは真っ黒なオーラが溢れ出ているのだがそれにシグが気付くことなく、こくんと首を縦に振ってしまう。
「いいよ。」
「…あら、話しがわかるじゃないの…。ほら、これを食べてみて欲しいの。」
フェーリが手を入れたポケットから取り出したのは、普通にお店で売っていそうな何の変哲もない、セロハンに包まれたキャンディだった。だが問題は外見ではなく中身、そのキャンディに何が含まれているか、だ。
さすがにこの展開にはシグも少しは警戒心を抱いたかと思ったが………
「いただきます。」
フェーリの手からキャンディをひょいと指先で拾い上げセロハンを剥がし、あっさりと口の中へ入れてしまった。
あまりにも安易な行動に呆れてしまうが、それも仕方がないのかもしれない。今までフェーリからは一度も変態的な類の被害を受けた事がなかったからだ。
飴玉をころころと舌で転がしてみるが甘いイチゴの味がするだけで別にこれといって身体に異常は診られなかった。
不思議に思ったフェーリがシグに問い掛ける。
「おかしいわね…。何ともないの?」
「うん。おいしいよ。」
「そうなの…。失敗作だったのかしら。…貴方、もう帰っていいわ。」
怪しい飴玉の効果を期待していたらしいフェーリは落胆した表情を浮かべて残念そうに隣町へと続く道へと引き返していった。
「なんだったんだろ…。」
そしてシグも再び帰路につき、家へと帰っていった。