ぷよ小説
□家庭教師=笑顔+お菓子
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「シグ。私はな、もうお前の通信簿に目を向ける事が出来ない。主に成績の辺りだ。」
「じゃあ見なくていいよ。」
「だが私は成績だけを見ているわけではない。お前の学校出席日数は素晴らしい、一日足りとも休んでいない、偉いぞ、パーフェクトだシグ。」
「わーい。ならもういいよね。遊びに行ってもいい?」
「しかし今回の成績はあまりにも酷い。前回はオール2だったというのに…今回は1もあるのだ。もう見て見ぬ振りは出来ない。」
「…まもの、やっぱりお腹へった。おやつちょうだい。」
「そこでだ。家庭教師を雇う事にした、今晩早速来てくださるようだからしっかり勉強するんだぞ。」
「かていきょうし…、勉強…?…まもの嫌い。もう口聞かないから。」
「シグぅ!!お兄ちゃんが悪かったから、今解約するからそんな残酷なこと言わないでくれっ…!」
そう言って電話の子機を素早く手に取り契約会社に問い合わせる魔物。
前半あたりの会話が噛み合ってはいないがシグは兄の扱い方をよく解っていた。
==途中解約お断り==
電話を挟んで数十分、やけにあっさりと話しを終えた兄は申し訳なさそうな、情けない表情を作ってシグの元へ帰ってきた。
「シグ、すまない。契約して一ヶ月以内の解約は無理だそうだ。我慢して一ヶ月、勉強に励んでくれ…。」
「………………。」
「…あぁ、もう口を聞いてくれないんだったな…。自分勝手な兄を許してくれないかっ?」
魔物は力が抜けた様にしゃがみ込むとシグの腰に腕を回してすんすんと啜り泣いてしまった。
兄の取り柄といえばその綺麗に整った顔と高い給与だけだというのに…(嘘)、これに極度のブラコンが加わっても何のプラスにもならない。むしろマイナスになる。
普段、会社内でクールな兄の姿を目にしている人間がこの状態を見たらどんな反応をするのだろう。
幻滅するだろうか。
しかしさっきから自分に縋り付き謝り続けている兄の姿を見ていると許してあげても良いのでは?と思う自分がいる…。全ては自分の為を想ってしてくれたことなのだから……
「…まも」
「あぁあシグ、良い匂いだなぁ。さすが私の弟。清潔な石鹸の香りが…はぁはぁ」
(……やっぱり許さない。)
それからシグが魔物を無視し続けて3時間が経った。時刻はあと10分で6時を指そうとしている。魔物は涙を枯れるまで出し尽くして目が真っ赤だ。だけど今日は夜勤があるので仕事へ出掛けなければならない。家庭教師と二人きりになるだろうシグを心配しながらも5時30分頃に家を出ていった(正確にはシグが追い出した)