ぷよ小説
□生徒会長の恋
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ここはプリンプ魔導学校。小、中、高とエレベーター式に構成されている超有名校だ。この学校に進学できる生徒は成績が良いだけでは入学できず、一般人が普通持っていないとされる“魔導の力”これが自身の身体に宿っていないとこの学校へは入学できないと言われている。
因みに近所の住民達には説明済みである。
そして春を迎えた今日、新学期が始まった。
やあ、僕はレムレス。この学校で生徒会長を担っているよ。そして気付けば僕はもう高校3年生、あと一年で卒業だね。この学校にスカウトされて入学した日から毎日が充実していて本当に楽しかったよ。このまま卒業できればもう思い残すことは何も無いんだけど…。新学期が始まってから一つ、気掛かりな事が出来てしまった。
その気掛かりな事とは……
夕方、授業をサボって校庭に一人ぽつんと佇む生徒がいた。その生徒は何をするでもなく、校庭の隅っこに植えられている木々を互い違いにじっ、と観察…いや、何かを探しているようにも見えるけど。…一体、何をしているんだろう…。
思い切って声を掛けてみようか、なんて思っていたら背後から僕を呼ぶ声が聞こえた。
「レムレス先輩…。何を見ているの?」
この子はフェーリ。フェーリはいつの間にか出来上がっていた僕のファンクラブを潰す為におまじないや、呪いを仕掛けてくれる頼りになる子だ。今となってはファンクラブによる僕へのラブレターや、学校集会などの声援はめっきり少なくなったんだ。凄く助かってるよ。
「フェーリ…。あそこに居る子が少し気になってね、目が離せないんだ。」
“誰だか知っているかい?”…と聞いてみるとフェーリはつま先立ちになって窓を覗き込むと“あぁ…あの子ね…”と呟いた。どうやら顔見知りらしい。
「…あの子、死ぬほど虫が好きなのよ。だからああして木の凹みに隠れている虫を捕まえようとしているの…。あ、ほら…。」
生徒は上手く虫を捕まえられたらしく、体中から喜びのオーラを飛ばしていた。…でも……
「…確か、あの木に樹液は出ていなかったはずなんだけど…。」
それに季節外れだよね。
「だから私が少し細工をしておいたの…。蜜を塗って、カブトムシをへばり付かせておいたわ。」
ふふふ、と怪しげな笑みを浮かべるフェーリは昨日捕ってきたばかりの新鮮なカブトムシなのよと僕に囁く。
しかし、どうしてそこまでしてあの生徒に尽くすのだろう。理由がわからない…
僕のファンクラブ祓いの場合は 僕が好きだからしているらしいし…。じゃあ、あの生徒には一体どんな理由があるんだろう。
そんな僕の心に浮かぶ疑問を読心術で読むかのようにフェーリはぽつりと話し出した。
「あの子の嬉しそうな顔、可愛いでしょ…?ムズムズするのよね。」
…うん、確かに可愛い、かも。よく見えないけど…。
「…よだれが出ているよ、フェーリ。あと、そのカメラは…。」
校則第16条では電子機器の類いは持ち込み禁止である。と、生徒手帳に確かに記されている。
「たまにはハメを外さないとやっていけないわ…。」
瞬間、パシャッとカメラがストロボを焚いてあの生徒を激写する。
すると当然、そのカメラのフラッシュを浴びた生徒はびくっと驚き、こちらに振り返る。
「…あ。」
目が合ってしまった。しかも生徒を激写した張本人はというと、窓際を既に離れていて撮った写真をぼそぼそと確認している。
「えっと…、その…。」
「……………。」
その生徒は予想外に可愛いらしい外見をしていた。それも女子と見間違えてしまうくらい…。
初めて見た神秘的なオッドアイに心を奪われ、僕は彼から目を逸らせられない。
これが…、僕が生まれて初めて一目惚れって言うものを体験した日だった。
彼の心を射止める期間はあと一年。
「…フェーリ、僕、頑張るよ。」
撮れたての写真をにまにまと眺め、僕の決意に耳を傾けていないフェーリにそう呟く。
そして校庭にいる彼にニコリと笑みを向けると、彼は小首を傾げる。
さぁ、今から君の心を僕のものにしてみせるよ。自分で言うのも何だけど、僕の本気は凄いんだ。……気をつけていてね。
…あと、彼の人間関係を調べてわかった事がいくつかある。
ライバルがたくさんいるということ。…俄然、燃えるけどね。