ぷよ小説

□無自覚にLove
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こんな真夜中に出歩いたりするなどこいつは一体どういうつもりだったのだろう。危機感というものが無いのだろうか。




夜9時、借り物が眠りに就く頃合いを見計らい、いつものように本から抜け出し身体を拝借する。魂が完全に身体に入り切ると瞼をゆっくりと開き、辺りを見回す。何の変哲もない借り物の部屋。

横たわっていたベッドから起き上がり眼鏡をかけ衣服を着替え窓から外へと飛び出す。唯一私が自由を得られる時間。ただし夜9時から朝方までという短い間なのだが…。まあ、仕方あるまい。

今宵は何処へ行こう…星が輝く静かな夜の時間、散歩へ出掛けるのが私の趣味になっていた。借り物の部屋にある書物は全て読破したために私は暇を持て余していたのだが…

(…たしかこの街には博物館があったな。もしかしたら図書室もあるかもしれない…。)

はっと絶好の暇潰しを閃いたものの、まだこの街の地理に詳しく無い為に多少迷ったりもしたが…何とか博物館にたどり着く事が出来た。

今は…午後23時だ…。

しかし不用心にも程がある。こんな時間なのだから当然、鍵が掛かっているものだと思っていたのに、押してみるとガラスの扉はすんなりと開き、楽に侵入出来た。

(…まあ、事件もそうそう起きない街だ。不用心になるのも頷けるが。)

足音を響かせ薄暗く長い廊下を歩いて行くと明かりが点けっぱなしの部屋があった。どうやら、この明かりが点いている部屋が私が捜し求めていた図書室らしい…

ドアのすき間から部屋を覗き見ると、そこには意外な人物がいた。

「…我が、半身…。」

部屋へ入ると椅子と机にもたれ掛かり熟睡してしまっている半身がいた。

音を起てないよう、静かに歩み寄り間近でじっくりと観察する。私とは対象的な白い肌に長く揃った睫毛、艶のある水色の髪、そして今は閉ざされている瞼の奥には美しいオッドアイがある。

(我が半身ながら、なんと可愛いらしい容姿をしている…。)

そして半身のふっくらとした桃色の頬をそっと撫でると……

「……んっ。…う…?」

どうやら起きてしまったらしい。もう少し愛らしい寝顔を見ていたかったのだが…。仕方ない。

まだ現状を理解出来ていないらしい半身は寝起き特有のほっこりとした表情でキョロキョロと頭を動かしていたが、視線を私に向けるなり直ぐに表情が変わった。

…ああ、これは………。

美しいオッドアイが私を映す…。その二つの瞳は赤く染まり、恐怖に揺れていた。

「…ぁ…、なんで…。」

「私が恐いか…?私の可愛い半身よ…。」

喉の奥でククッと笑い、その小さな顎を指で掬うと顔を近付ける。半身が恐怖で身体を硬直しているのを良い事に無理矢理半身の唇を奪う。

「…んぅ…っ。」

瞳を見開き、驚いている半身に噛み付く様に荒く乱暴なキスを繰り返していると漸く我に返った半身が私の胸を押したり叩いたり等の抵抗を始めた。

そんなもの、無駄だというのに…。

半身の小さな抵抗を無視し、さらに深く唾液を混じ合わせようと舌を口内へと滑り込ませ、舌を絡ませるが…

「…や、ぁっ…。」

途端、口内に広がる鉄臭い味…

「…ッ、やってくれる…。」

半身を床へと突き飛ばし、舌に感じる痛みに口を掌で覆う。指の間を口内から溢れ出た血液が流れ落ちるのを見た半身は呼吸がまだ落ち着かない内にその場から逃げ出した。

「…だ、誰かっ…。」

「ははっ…何処へ行くのだ。」

私がお前を見逃す筈がない…。可愛いお前の居場所など、私には直ぐに解るのだから。

…だが、早々と見つけて捕まえてしまっても面白くないからな、少し…遊んでやろう。
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