ぷよ小説
□6月16日
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6月16日、早朝。部屋の前に差出人不明の一つの大きなプレゼント箱がとどいた。
その箱はピンク色のリボンで可愛いらしく包装され、何故か小さな空気穴が二つあいている。中の様子は暗くて目で伺えないもののすんすんと匂いを嗅いでみると微かに甘いバニラ臭がする。
「おたんじょうび…おめでとう、シグ君、……君って書いてあるよ、まもの。」
リボンの間に挟まっていたバースデイカードらしき紙を手にとり、綴られている文章を朗読する魔物の弟シグ。
「ああ、それは“魔物”と呼ぶのだ。私の名前は漢字でそう書くんだぞ、覚えておいてくれ。」
「ふーん、そうなんだ。…あとこの箱、すごく大きいね…。」
「(無視されてしまった…)そうだな。…成人間近な男が一人たやすく入れるくらいに大きいな…、なぁ、シグ。」
(…チッ……)
「うーん…。中身、何がはいってるのかな…?」
こんなに大きい箱見たの、ぼく初めて…。と、箱に縋り付き眠そうな瞳をうるうるキラキラと輝かせて呟く純粋なシグ。
ああっ、我が弟ながらなんて愛らしい!!押し倒して服を脱がせて全身くまなく舐め回してしまいたくなるっ…衝動を必死に抑え込む魔物。シグはまだ小学生なのだ。
しかし一度、心中で生まれてしまった妄想を押さえ込むことは中々、難しい。
「(いかんいかんいかんっ!)お、恐らく期待以上の物は間違いなく入ってないな。見たらガッカリするぞ、シグ。決して中身を見るんじゃない。」
「うん…。でも気になる…。」
兄の言う事をききたいが、やはり中身は気になってしまう…。開けるなと言われれば、開けたくなってしまうものなのだ。
この調子では魔物が外出した時にでも開けてしまいそうな雰囲気だ。それだけは絶対に阻止しなければならない。
その箱の中身は確実に奴だからだ…。
「そうか。ならば仕方がない…。昨日買ったばかりの切れ味の良いこの包丁で真っ二つに」
びりっ、ばりーーーんっ!!
「お誕生日おめでとう!シグ君、魔物君。」
プレゼント箱を勢いよく頭で突き破り現れたのはシグをねっちょりと付け回している隣の部屋の住人、大学生のレムレスだった。
(やはり、出たなストーカー…。)
「今日は君達にお誕生日ケーキを持ってきてあげたよ。…ふふ、嬉しいかい…?」
「うん、嬉しい…。レムレス、ありがとー。」
シグはレムレスを“いつもおいしいケーキを作って持ってきてくれる優しいお兄さん”として懐き慕っているが…。魔物にとっては可愛い弟の貞操を奪おうとしている天敵にしか見えない。
思い返せば二人がこのマンションに引っ越してきた当初からシグは目を付けられていたのだ。
レムレスは魔物がバイトでいない時間帯を見計らい、毎日訪ねてきては、ケーキを餌に部屋に上がり込み、魔物が帰ってくるギリギリの時間までシグとお茶をしていたようで……。