ぷよ小説
□amour eternel
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今日もレムレスの周りには女の子の群れがたくさん詰めかけていて、握手やらサインやら写真をねだられていた。
押されたり触られたり、手紙を渡されたり揉みくちゃにされているにも関わらず笑顔を絶やさず一人一人丁寧に対応している。
その様子を少し離れた場所から見つめている小さな影が二つ。
「…レムレスのばか。」
「本当ね、信じられないわ…」
シグとフェーリの二人はレムレスに憎悪と嫉妬をたっぷり含んだ念を投げ掛けていた。
「…こうなったら。あなた、先輩を攻めるのよ。」
「…ヘーリ、ぼくがんばる。」
「フェーリよ。存分に頑張ってちょうだいっ。」
実は先日、めでたくシグとレムレスは恋人として結ばれたのだ。
しかしそれは数カ月に渡るレムレスからの納豆のようにねちっこい、ねばねばアプローチを毎日欠かさずぶつけられていたシグが根負けしたから。…と、本人は説明する。
…もちろん、付き合う事を承諾した理由はそれだけではないが極端に恋愛経験の少ないシグだ。レムレスが女の子に囲まれているだなんて、日常茶飯事のことであっても決して良い気分ではない。
自分もレムレスが好きだし、レムレスも自分を愛してくれている…それは確かな筈なのに言い知れぬ不安を感じて苦しくなってしまう。
「ぼくのこと、好きって言ってくれたのに…。レムレスはあの女の子達も好きなの…?」
「シグ…、それは違うわ。だけどあなたが不安になってしまうのはわかる…。」
あなたがそう思ってしまうのは普通のことよ。けれど、先輩は有名になってしまったから思いきった発言や言動は出来ないの。
こうフェーリがシグに説明するのだが、心のもやもやがどうしても消えない…。
自分が好きなら、なぜ他の人に笑顔を向けるのか。優しく触れてくれるその手を、唇を、心を自分だけに向けて欲しい…。
こんな苦しい想いをするなら恋人になんてならない方が良かったのかもしれない。
だってそうしたらレムレスはきっと、毎日あのしつこい…愛の篭った告白を続けてくれたのだから。
考えれば考えるほど悲しくなってきて気付かない間に両瞳から涙がポタポタと頬を滑り落ちていた。
「な、泣いちゃ駄目よっ。」
「…うん…っ。」
せっかくフェーリが自分を励ましてくれているのに泣いてしまっては彼女に申し訳ない。ぐしぐしと瞳に溜まった水分を腕で拭う。
「…こうなったらあなた、先輩を誘惑しなさい。」
「………え…?」
「こっちに来るのよ!」
「わぁ…っ。」
フェーリはシグの腕をしっかり掴むと、草むらから飛び出して自分の家がある方向へ駆け出した。
「…シグ君…?」
背後からうっすらと愛しい子の声が聞こえたような気がして後ろを振り向くレムレスだが、…そこにいたのはシグではなくカブトむし一匹だけだった。
…この感じ、以前に味わったことがある。シグはまだ知らない単語、それはデジャブという。
「…フェーリ、これ…?」
「似合うわあなた。完璧よっ。やっぱりあたしの占いに狂いは無いわ…!」
体中から黒いオーラを放ち、そして奇声を上げて喜びだすフェーリ。
自らトランス状態になってしまった彼女をシグはぽけっと眺めていたが、部屋を見渡すとその一角に全身を映せるほどの大きな鏡があることに気付いた。
シグはその鏡の前まで移動し、今の自分の服装を目を凝らして観察してみる。
頭上には白いフリルがふんだんに飾り付けられているヘッドドレスに、メイド調に作られた丈の短い白いワンピース、そして白いニーソックスを履かされ太腿にはガーターベルトまで取り付けられている自分の姿。
それを目前にしたシグの開いた口はなかなか閉まらなかった。
こんな姿をまたレムレスに見せろと言うのかっ。
少し屈むだけで下着が見えてしまうこの服装を…
「フェーリ、恥ずかしいよっ…。」
「なに甘ったれてるの。先輩の変態心をくすぐった完璧な計画なのよ!…まぁ、結局はあなたのやる気しだいだけど…。」
「そう、だよね…。」
…確かに、レムレスの変態の域を熟知しているからこそ出来るフェーリの完璧な計画…。
「先輩が他のメス豚共に取られてもいいのっ!?」
「だめっ、ぼくがんばるっ。」
…しかし意外にも早くシグの決意は固まった。