□月は我に味方する
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小さい頃、月が怖かった。
だってさ、あいつ、いつまでもどこまでも俺のあとをついて来るんだぜ。
ぼんやりした青白い光を出すなんて気味が悪い。
おまけに変形するし、神出鬼没。空のどこに出てくるか分かったもんじゃない。
そしてあいつは、夜だけじゃなくて昼にも顔を出してくる。どれだけ俺を見張れば気がすむんだよ。うっとうしい。

月見はいつもの仕返しだ。いつも見てくるなら、こっちだって見てやる。
月見だんご?
おまえのためじゃない、うさぎにあげたんだよ。
……月に住んでいるうさぎはかわいそうだな。
いや、捕らわれているのか。絶対そうだ。呪いで操られているんだ。
月の光を浴びた俺も、いつか操られるかもしれない。
負けるか。最後まで抵抗してやるさ。


満月とか新月の日は願いが叶うらしい。
きっと、魂を売らないと叶えてくれないんだ。
あいつは悪魔だ。
ほら、満月を見たら狼に変わる人間とかいるし。

でも、大きくなった今なら分かる。
月は自分では光ってないし、形が変わるのは見かけだけ。自然の摂理で、仕方ないことだったんだ。
別に神出鬼没でもない。知識さえ身につければ分かるだろう。

何より、夜道でどれだけ助けてもらっていたか。
いつもついて来てくれて、道の先を照らしてくれていたんだ。

街灯みたいに部分的で無責任じゃなく、陰ながらずっと導いてくれたんだ。
大きくなるまで、こいつのありがたみなんて分からなかった。
だから、ありがとう。
これからもよろしく。




fin.
→あとがき

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